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村便り:2007-06-15(金) (除草剤散布)
投稿日:2007-06-18(月)

 夕方、除草剤を撒いた。

 除草剤は、我が家の稲作で使う唯一の農薬である。除草剤は代掻き時と田植えあとの二回使う人もあるが、私は田植えあとの一回に限っている。除草剤以外の農薬としては、たいていの人は田植え直前に育苗箱に振りかける殺虫剤を使う。その殺虫剤も使用をやめてから5年になろろうか。やめたのは、田植え時期から考えて、それなしでも収穫に影響の出るような被害(とりわけイネミズゾウムシの被害)はなかろうと判断したからである。実際、その通りであった。

除草剤を散布した田んぼ
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 田の表面の白い粒が除草剤である。次第に溶けて田の水に混ざり、雑草を枯らす。だから、除草剤を「草枯らし」と呼ぶ人もいる。空き地などで、季節でもないのに一面、草が黄色に枯れていたら除草剤が散布されているしるしである。ご注意!
 除草剤を撒くと、気のせいかもしれないが、田んぼの様子が微妙に変化する。その印象は、言ってみれば、「沈黙(silent)」である。しかも不気味な。
 除草剤には乳剤と粒剤がある。乳剤のほうが扱いやすい。私は粒剤を使っている。以前から粒剤だった、という惰性以外の理由はない。粒剤は少量を広い面積に撒くので神経を使う。気前よく撒いていると、足りなくなる。ひと摘まみずつ、目分量ではあるが一定の面積にばらまかねばならない。そこでまず小面積の田んぼでの散布で量の加減をつかんでから、広い面積の田んぼに入ることにしている。

 除草剤散布は田植え後10日ほどでおこなう。稲が活着し、まだ雑草が大きくならない時(ヒエだと二葉半まででないと除草剤は效かない)を狙えば、そのぐらいの時期になる。除草剤を撒いてから少なくとも数日間は田んぼの土が見えない程度の水を張っておく(*)。また、水は田んぼの外に、畦の穴やひび割れを通して漏れたり、畦をこして流れだしたりしないように注意する。水漏れと流出には十分に対応できるが、水張りはなかなかうまくいかない。小川から取水している井手の水は天候の影響をつよく受ける。数日雨が降らないだけで水が細る井手もある。また、毎日、水の状態を見張っていないと、晴天の日には水が蒸発して土の表面の凸部分が露出する。それに、井手の末端にある我が家の田んぼは、水を入れようにも水がなかったり細っていたりすることがよくある。
(*)土が露出していると、その部分には除草剤が效かない。

 農薬を使うときには農業用の防毒マスクをつける。マスクをつけずに作業をして何かの拍子に農薬を吸い込むと、身体を壊す。除草剤を撒く田んぼには蛙が鳴き泳いでいる。蛙は死ぬことはないが、ミジンコなどは死んでしまうのではないか、と思う(確かめたことはない)。蛙でも死なないにせよ、影響は受けるにちがいない。心痛む作業である。

 毒薬撒きは一日で終わらせたい。日が暮れる前になんとか田んぼ全部がすんだ。田植え後の雑草の成長に気を揉んでいた上に、毒薬撒きは鬱陶しいがゆえに、作業が終わると肩の荷が下りたような解放感があった。
村便り:2007-06-13(木) (黄タマネギの収穫)
投稿日:2007-06-15(金)

 午後一コマ目の授業が終わると、車で40分の畑に急いで向かった。雨が降り出す前にタマネギを縛り、小屋に吊るしたかったからである。

タマネギの収穫
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タマネギの収穫。
 赤タマネギは5月27日に抜いた。黄タマネギも6月に入ると収穫期になるが、田植えに忙しく、様子を見てもやれなかった。やっと田植えが終わり、この前の日曜日(6月10日)家族に頼んで、抜き取り畝に並べておいてもらった。赤タマネギは子ども一人に抜かせたところうんざりしたようなので、今度は母親(すなわち ma femme)と一緒に作業をやらせた。聞くと、タマネギは全部、葉が倒れていたそうである(*)。タマネギは、抜いてすぐに納めることもあるが、天候の状態がよければ二日ほど畝で干してから納める。
(*)ふつうタマネギは葉が倒れた時(葉は根元から倒れる)が収穫適期である。作業の関係上、圃場の7割ほどが倒れた時に全部、抜き取る。赤タマネギの方は、種袋に、葉の倒伏を待たずに収穫したほうが保存期間が長くなる旨の説明がしてあったので、倒伏が始まるとすぐに収穫した。

 梅雨入りが目前に迫り、天気予報によると、午後、夕方を待たずに雨が降り出すことになっていた。さいわい、授業が終わった時は、空の様子からしてまだ数時間は雨が落ちてきそうもなかった。

 畑について着替えるとすぐにタマネギを縛り始めた。タマネギは紐の両端に5個づつ縛って都合10個を、棹に左右に分けて吊るす。作業をしていると隣のお姉さんが声をかけてきた。「ようできとるね。自分の農法[自然農法]でこんなにできたん?」彼女は畝が草だらけなので自然農法だと勘違いしたようである。「いやこれは普通のやり方で作った。元肥は発酵鶏糞とカキ殻石灰、追肥は化学肥料を使こうた。」と私。彼女は「ほうなん。でも、あれはそう[自然農法]なんじゃろう」とソラマメとエンドウを指さした。「うん。豆は自然農法でもようできる。でもタマネギは、一回試したが、うまい具合にいかんかった。」

 作業を続けていると、また彼女がやってきた。「そういえば、[タマネギを吊るしておいてもタマネギが]落ちん縛り方があるんじゃろう?教えてや。」彼女にはその縛り方について話したことはなかったが、別の隣家のおばさんには去年、話したことがある。去年は収穫した当日に縛った。通りかかりに私をみたおばさんは「いらんことじゃけど、葉っぱを乾かして縛った方がええんじゃない。採ってすぐ縛ると、吊るしとるうちに葉っぱが乾いて細うなり、紐から抜けて落ちてしまうよ。」と私にアドバイスしてくれた。「干す暇がないけん今日はすぐに縛りょうるが、抜けん縛り方があるけん、大丈夫よ」と私は答えて、ひとつ縛ってみせた。彼女はおそらくはそのおばさんから話を聞いたのだろう。そこで説明しながら縛ってみせた。縛り方は、簡単に言えば、タマネギの重さで紐が自然にしまっていくようにするのである。

 全部で270個ほどあった。今年は玉が大きい。玉は適度の大きさ(ないしは小ささ)でないと使いにくい。我が家の場合はたいてい小振りの玉になるのだが、暖冬だったせいか、いつもになく大きかった。

 作業をしているうちに雨が落ちたりしたが、なんとか本降りになる前に、縛り終えて、小屋に吊るした。

 作業を終えると、また学校に帰り、明日の授業の準備。結局、帰宅したのは夜の10時であった。
村便り:2007-06-10(日) (さなぶり!)
投稿日:2007-06-11(月)

 やっと植え継ぎ(補植)が終わった。6月4日(月)に機械での田植えが終わり、6日(水)から植え継ぎを始めた。その日から8日(金)までは早朝とか夕方を利用しての作業であり、9日(土)は全日を、10日(日)は午前と、午後の半分を費やした。

植え継ぎ
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植え継ぎには、苗は小さな籠(写真中央左側)に入れて腰につける。苗はあらかじめ小さく短冊状(籠の手前にひとちぎりが置いてある)にちぎり、根を水で洗っておく。根は育苗土がついていて、そのままでは適量(私は一ヶ所3本を目安に植える)をちぎり離すのに力がいるし、またちぎる本数が分かりにくい。
 田んぼ内部の欠株を補うときは前後左右の株の間隔を見ながら、植える場所を決める。しかし、田んぼの隅で広い範囲にわたって補植するときは「定規」を使う。写真中央右に見える竹竿がそれである。竹竿には、20cm間隔と30cm間隔に印をつけてある。苗は、条間30cm、株間20cmで植えられる(株間は機械により、また設定により、変わりうるが、我が家の機械の場合は20cmである)。「定規」は水に沈むと都合がわるいが、逆に、水に浮いていると風などで流されることもある。そのような場合には、長い棒で作ったクリップで挟み込む。写真の「定規」は両端をクリップで挟んである。
 手植えと違い、機械植えではかならず植え残しが出る。機械が田んぼに出入りする個所と機械が方向転換する隅(田んぼが長方形だとすると、角の四ヶ所)は、植え残しは避けようがない(*)。苗は、根の部分がマット状になった長方形の形に仕立ててある。そのマットの湿り具合、あるいは苗の密度によって、苗を適量マットから掻き取り、その苗を植える金属製の爪がうまく動作しない、すなわち苗を掻きとらない、ことがある。孤立して一ヶ所だけ株が欠けることがあれば、連続して複数株、欠けることもある。さらに、田んぼの土の柔らかさも植え付け状況に影響する。それ以外にも欠株の原因はある。
(*)方向転換する隅に関しては、本によれば、植え残しを少なくするテクニックがあるそうである。
 機械植え二年生の私は、植え付け状況に十分に注意を配るだけの力量も余裕もない。

 一年目の去年は、田植えまでに機械の説明書や機械操作に関する市販の本を読み「予習」しておくつもりであったが、田植え準備に終われ、結局はぶっつけ本番になった。田植え当日は、JA農機センターの若い所員が来てくれた。まず、軽トラックへの田植機の積み込みと積み下ろしを説明しながらやってくれた。田んぼに着き、段差のある田んぼへ私がおそるおそる田植機を入れると、その所員は操作の説明をしてから、少しだけ実演してくれた。狭い田んぼを一枚植え終わるまで、所員は見守ってくれたが、あとは「一人旅」。フランスでは自動車教習所に入ると、仮免許なしに初っぱなから路上教習らしいが、まさにそれであった。無我夢中で田植えを終え、作業に関する簡単なメモを残しておいた。

 田植機は一年に一回しか使わない。だから、去年の記憶は薄れてしまい、今年もまっさらの初心者マーク状態。こんな私が植えるのだから、植え残しが多く、植え継ぎにも時間がかかった。今年が去年と違うのは、植え残しの原因を考えるだけの素地が、一回とは言え去年の経験から、できていたこと。したがって、機械操作の改善点に関して、去年よりはるかに多くのメモができたこと。私の鈍さのゆえかもしれないが、農作業は三年くらい経験しないとなかなかうまくならない。畦塗りも人に見られても恥ずかしくない程度にできるようになったのは三年目だった。来年は欠株を大幅に減少します!

 今日はさなぶり。やっとさなぶり[早苗饗 ― 田植えを終えた祝い]。気持ちが晴々し、茹でた赤ソラマメをつまみに飲む晩酌が格別に旨かった。
村便り:2007-06-04(月) (機械での田植え終了)
投稿日:2007-06-05(火)

 やっと田植えが終わった。

 「村便り」は、懸念していた通り、田植えの準備のため二週間あまり記事の掲載ができなかった。田植え前、三週間ほどは、畦塗り、アラジ(荒代掻き)、代掻き(植代掻き)のため、田んぼにつきっきり だった。
 サラリーマン稼業もあるので、週日は、早朝と夕方を使う。さすがにトラクター作業は、たとえ月夜であっても日が暮れてからは、したくない。足場の悪い田んぼの出入りで怪我をしたくないからである。しかし、鍬だけを使う手作業の畦塗りは、終わらなければ、日が落ちてからも続ける。これが結構、気持ちがいい。この時期、夜になると気温が下がるが寒いわけではない。夜陰に浸され田んぼの水に入って作業をしていると不思議な快感を覚える。月や星を友に仕事をせざるをえない兼業農家の、かくれた楽しみとも言える。

 トラクターは、田んぼの水の中で走らせたあとは、原則として、洗う。トラクター作業は日没までに終えるが、屋敷にもどると、ポンプでくみ上げた井戸水をホースで勢いよくかけてトラクターの泥を洗い流す。泥はまだ濡れているので、水の勢いで流れてしまう。井戸端には照明がないので、闇の中でトラクターの一部分を照らしだすヘッドランプの光を頼りに、水をかける。トラクターの洗浄が終わると、身体も濡れてしまう。

 田植えは、6月2日(土)を予定していた。しかし、代掻きが予定通り進まず、6月4日(月)になってしまった。サラリーマン稼業との兼ね合いを考えると、この日がリミットである。月曜日は授業も会議もないので、休暇をとれる。しかし、火曜日からは授業があり、月曜日にできなければ、田植えは一週間も遅れてしまうことになる。苗の生育状況を考えれば、それは避けたい。最後の代掻きは土曜日だった。ふつう代掻き後、三、四日はおいて田植えをする。代掻き直後は田の泥がまだ落ち着いていない(柔らかい)からである。だから月曜日の田植えは《見切り発車》だった。

 田植えは乗用田植機を使う。一昨年、それまで田植えを委託していた人が病に倒れ、去年から、10年落ちの中古田植機を買い求め、自分で田植えを始めた。田植え二年目。しかし、田植機は一年に一日使うだけだから、去年の経験は忘れてしまい、今年も田植え一年生。機械に慣れた人の倍も時間をかけて日没時になんとか作業を終えた。片づけ、田植機の泥洗浄などを終えて、帰宅したのは夜10時。

 田植機はパワーステアリングではないので、思いのほか握力を使う。ハンドルを回す腕力そのものは、一日操作しても、通常の農作業でのレヴェルを超えないが、握力は違う。一日の作業が終わると、両手の小指と薬指がつるような状態だった。

 ともかく、稲作の最初の大きな山はこれで越えたことになる。ひと安心。(田植えに関しては、植えつぎが残っている。田植機が植えなかった株を補植する作業である。)
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