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村便り:2011-12-21(水) (わらぐろ)
投稿日:2011-12-23(金)

 脱穀時、藁切り機に通さなかった稲束がある。春の踏み込み温床や野菜の敷き藁に使うためである。縛ったりするために使う藁は、モチ米のものを200束ほどすでに小屋に納めてある。ウルチ米のに比べモチ米の藁はねばいので、使い藁にはこちらにする。それ以外の用途には、ウルチ米のものでもかまわない。週末は天気が崩れるという予報なので、稲束を、濡れてしまう前に、積むことにした。


わらぐろ
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今年のワラグロ。
 積んだ藁束は400あまり。この田んぼは3畝(300㎡)ほど。ちなみに、この広さからは600束あまりの藁が手に入る。ここは、来年1年は休耕して畑に転換する。
わらぐろの積み始め
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わらぐろの積み始め。
 藁は4束をくくって1単位にした。それを田んぼに垂直にたてた中心棒のまわりに並べる。12単位でひとつの層を作る。
 去年はバインダーが括った小さな束をそのまま並べた。隙間なく積むことができるが、通気性が悪くなる。そこで、今年は大束を積むことにした。
積み終わったわらぐろ
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積み終わったわらぐろ。
 緩い傾斜の三角錐になっている。写真で見た、三角錐の帽子を被ったわらぐろは、もっと傾斜が強く、また帽子に当たる部分は特殊な積み方がしてあった。
 小さい頃のかすかな記憶によると、脱穀がすんだ田んぼには、円筒形に藁が積んであるところがあった。藁屋根の葺きかえなどに使ったそうである。いまは、その姿は見えない。藁を使うことがほとんどなくなったからである。私は見かけた記憶が残るだけで、その名称さえ知らなかった。従姉(私より15歳年長)によると「わらぐろ」と呼ぶそうである。

 使うのは早くても来春の3月。小屋には納めるスペースがない。屋外で保存するとなると、雨などによる濡れを防ぐ工夫が必要である。去年、はじめてワラグロを作った。しかし、雨対策をしなかったので、藁が湿って発酵した。春にはなんとか使えたが、次第に腐っていき、最後には黒く変色して、くたくたになった。

 今年は去年の反省を踏まえて、積み方を工夫し、また、シートを帽子のように被せた。積んだ藁の形を本で確かめると、シートを被せているものもあるが、上部を三角錐の形に傾斜をつけているものもある。藁全体の積み方からして、そうしているものもある。もしかすると傾斜が、雨対策には有効なのかもしれない。降った雨が藁に滞留せず、流れ落ちるだろうからである。しかし、三角錐に形を整える自信がなかったので、また、うまく形を整えられたとしても、雨にどのくらい有効かわからなかったので、安全策をとってシートを被せることにした。


去年のわらぐろ
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去年のわらぐろ。
 藁の量からすれば、こんな手間をかける必要はない。ホームセンターに行けば、広いシートも手に入るので、それを使えばなんとかなる。実際、そうしたこともあった。しかし、ワラグロは作ること自体がおもしろい(まだ経験が少なく、新鮮だからかもしれないが)。おそらく近所には、存在のはっきりとした記憶はあっても、作り方(複雑なものではないが)を知っている人はもういないと思う。だから、本の写真などから推測して積み方を工夫する。すると、過去を再構成しているようなわくわく感もある。

 2時間ほどかけて2年目の《作品》が完成! 田んぼの一角に過去との連続性が出現した。
村便り:2011-12-05(月) (脱穀終了)
投稿日:2011-12-19(月)

田植え
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今年の田植えは、6月4日と6日にした。例年通りである。例年、5月終わりか6月始めの週末に行う。近所では、いつも田植えのしんがり。
 やっと一年が終わった。稲の脱穀作業が完了すると、そう思う。農耕の一年は、稲作を太い縦糸にして、それに畑作が絡みつくようにして経過する。一年が終わると、これであと一年は生きられる、と安堵の気持ちになる。あと一年生きられる、とは、百姓を始めたころ、いまは亡き近所のおばあさんから聞いた言葉。この言葉は歳を重ねるにしたがい、深い感慨となった。命の糧を保証された一年を辛苦して、また次の一年の糧を得る。この繰り返しが、稲作地帯の農耕だろう。


稲刈り
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11月4日。今年最後の稲刈りは、耕作放棄田に囲まれたダブ[湿田]。毎年、この順序になる。ここはウワコウダ[傾斜地の田んぼの、上の部分]の水はけが悪いので、バインダーが泥に埋まってしまう。だから、鎌で手刈りしなければならず、ついつい後回しになる。
 ひとりで刈り取り、ひとりで稲架掛けし、ひとりで脱穀する。中山間地の、ほんとうに小さな農家だが、ひとりでの作業はやはり時間がかかる。しかも通いの兼業である。稲刈りは10月16日に始めたから、稲刈り、天日干し、脱穀の収穫作業に8週間がかかったことになる。周りの田んぼも昔ながらの天日干しが多いので、私が刈り取りを始めてから一カ月ほどは、他家の田んぼにも稲架がたっている。


稲架掛け
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11月14日。稲刈りの画像と同じ田んぼ。稲架三つのうち、両端の二つは11月4日の稲刈り当日に稲架掛けした。真ん中のひとつは、この日、稲刈りして掛けた。稲は稲架に沿って並べてある。日没後に稲架掛けをした。
 11月の初旬ころまでは、気温もさほど下がらず、晴天の日も多い。稲架にかかった稲も乾燥しやすい。だから、その頃までに一気に脱穀までおえてしまうのがいい。しかし、11月の半ばにもなると、気温も下がる。数日毎に雨があったりすると、籾はなかなかかわいてくれない。しかも、サラリーマンなので、ここぞという日に脱穀ができるとは限らない。11月半ば他家の田んぼから稲架の姿がほとんど消えてしまっても、わが家の稲架は大半が残っている。さらに一カ月、脱穀の最後には、わが家の田んぼの一部だけに、ぽつんと稲架が、寒気にさらされて、残る。



 昔は(機械植え以前の時代は)10月半ばから稲刈りをしていたらしい。従姉の昔話では、10月半ばに秋祭りがあり、それから稲刈りが始まった。昔は子どもも働き手だったので、稲の収穫作業を手伝わされた。だから、祭りがくるのが嫌でたまらなかった、と昔を語った。

 いまは刈り取りと結束を機械(バインダー)がやってくれが、昔は鎌で刈取り、稲束をわら紐でくくった。労力と時間はバインダーよりもはるかにかかる。作付け面積にもよるが、家族総出の作業でも、稲刈りと平行しておこなう稲架掛けが終わるのは、10月の終わりだったろうか。すると、稲の乾燥は、かわきにくい11月にまで及ぶことになる。

 昔は、稲束をかわききるまで稲架に下げてはおかなかったそうである。ある程度までかわくと、順次、家にもって帰り、縁側に積み、脱穀した。(脱穀が終わるまで、縁側の稲束に光を遮られて、家のなかは暗かったそうである。)そのあとで、もういちど籾をむしろに広げて乾燥をしあげた。そのやり方の訳を聞いたわけではないので、推測だが、かわきにくいその時期の天候にもよるのではなかろうか。田んぼにかわき切るまで干しておくよりは、むしろでもう一度かわかした方が、手間はかかるにしても、農耕暦の円滑な進行のためにはよかったのかもしれない。昔の農耕暦では、ついで、麦の播種がある。麦は稲の裏作なので、稲を刈り終わった田んぼを鋤で起こしから、麦播きをした。稲架がたっていたのでは、作付け作業ができない。麦播き作業は11月に入るとじきに始めたそうである。

 いつまでも片づかない収穫作業の合間に、昔のことを考えてみたりした。


脱穀
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11月27日。脱穀機には藁切り機がつけてある。普通は、脱穀した藁を切って排出する。藁が必要なときは、藁切り機を止める。
 11月終わりから12月の始めになると、いよいよ本格的な冬である。気圧配置も西高東低になる。すると強い風が吹き、籾の水分が一気にとぶ。籾の水分は、出荷するためには14.5%から15.5%の間に調整しなければいけないそうである。出荷農家規模になると、刈り取り脱穀機(コンバイン)で稲刈りをし、籾を乾燥機で強制乾燥する。要求される水分に調整するのも容易である。自然任せの乾燥をする私は、16%を切れば脱穀することにしている。(ちなみに、16.5%ほどの水分が米が一番おいしい、という記事を販売業者のサイトでみたことがある。)

 強風に後押しされて、やっと脱穀が終わった、というわけである。


 今年は「村便り」は書かなかった。3月半ばから夏野菜(トマト、ナス、ピーマンなど)の温床育苗を始めたが、イノシシに温床を二度襲われて、夏野菜は主力の栽培ができなかった。それ以外のこともあり、気力が落ち込んだまま、回復しなかった。とはいっても、稲は田植えをやれば、最後まで面倒をみなければならない。だから、今年は、農耕の縦糸こそはなんとか通したが、畑作の横糸はまばら、「村便り」は休載、という結果になった。これからは? 半農半サラの二足の草鞋は、来年3月で丸17年になる。そして残りは3年。有終の美とはいかないにせよ、精一杯やりたい。ウェブ・サイト「てつがく村」は来年3月で丸12年になる。最後まで続けようか… マンネリ化してはきたが。

投稿日:2011-12-19(月)

 てつがく村の
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