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村便り:番外篇 (ガンギについて)
投稿日:2007-07-10(火)

 ガンギの切り方について質問があったので、まとまった説明をしてみる。

「ガンギ」という言葉
 まず言葉の説明から。「ガンギ」は、播き床ないし植え床を指す。そうした床を平鍬で作ることを、「ガンギを切る」と言う。この言葉はきわめて狭い範囲で使われている方言と思っていたが、もしかしたら、昔は広い地域で使われていたのかもしれない。宮崎安貞編録『農業全書』を読んでいて、この言葉に出会った。(引用は岩波文庫版より。)
「[大根の]種子をおさめ置く事、霜月の初め大根多き中にて、なりよくふときをゑらび、毛をむしり、葉は其まゝをきて、一兩日も日に當てゝ、少ししなびたるを畦作りし、がんぎをふかく切り、肥地ならば凡一尺に一本づゝうへをくべし。」
文脈からすれば、文中の「がんぎ」は私の使う「ガンギ」と同じ意味であると判断される。校訂者によれば、宮崎は「安藝國廣島藩士宮崎儀右衛門の二男」で「元和九年[1623年]廣島に生る」とあるから、「ガンギ」は当時、安藝國で(普通に?)使われていた言葉の可能性がある。



縦ガンギと横ガンギ
(クリックで画像の拡大)
黄色い幅が「ガンギ」である。ガンギは平鍬で切る。だから、幅は鍬の幅になる。そこに作物を定植したり、種蒔きをしたりする。この画像は、里芋の場合を想定している。ガンギの中の×印は里芋が植えられている個所である。株間(ガンギ間ではない)は40㎝余り。
縦ガンギと横ガンギの関係
 さて、私はふつう縦にガンギを切って種蒔きや定植をする。縦ガンギと横ガンギの関係は、画像を見てもらえば分かるように、横ガンギを縦長のブロックに分割して、そのブロックを90度回転させて並べると、縦ガンギになる。だから、幾何学的には、ブロックの並べ方の違いにすぎない。

里芋の場合
 里芋を植える場合を例にとろう。手元の野菜栽培指南書をひもとくと、里芋は「畦[うね」幅100㎝とし30㎝から45㎝の間隔で植え付ける」と書いてある。私なら畝幅は60㎝程度にするだろうが、いまは指南書にしたがって説明する。さてこの説明に素直に従うと、横ガンギで植え付けることになる。実際、この指南書の図は横ガンギになっている。指南書の説明はたいてい横ガンギを想定したものであることからすれば、横ガンギがポピュラーなのかもしれない。ところが発想をわずか90度転換すると、縦ガンギでも対応できることが分かる。

 里芋は元寄せ[土寄せ]をする。横ガンギの場合は、畝の両側の土(緑に彩色してある部分)をすくって株元に寄せる。それに対し縦ガンギの場合は、ガンギとガンギの間の土(これも緑に彩色した部分)を寄せる。

縦ガンギの特徴
 さて縦ガンギの、メリットと言えるかどうかは別として、特徴は何か。

 まず畝幅は鍬の柄より20㎝ほど短い幅にする。この幅には理由がある。この幅だと、ガンギを切るとき、あるいは中打ち[中耕]や元寄せをするとき、畝のいずれかの辺に立って、言い換えれば、畝の中に足を入れることなく、鍬を使うことができる(ただし可能性の話であり、実際の作業では、畝に足をおいたりすることもあるが)。

 また、ガンギが鍬の柄ほどで一定していると、リズムに乗った作業ができる。リズムの単位が一ガンギの長さである。

 ガンギ間は、基本的には、何センチといった単位では決めない。鍬の幅で測るのである。画像の縦ガンギを見ていただきたい。まず最初のガンギ(一番上の黄色に彩色した幅)を切る。それから、里芋の場合は、鍬の幅を目安に3鍬分スペースをあけて、次のガンギ(上から二番目)を切る。ガンギ間のスペースは作物によって変える。里芋やジャガイモのように元寄せする作物は3鍬分のスペース、大根は2鍬分、人参は1.8鍬分といった具合である。しかし、1.5鍬より狭くしない。中打ちや除草の際、ガンギ間で鍬を使いづらいからである。

 ガンギの切り方にはこつがある。下肥を使っていた時代は、ガンギの中程をこころもち低くした。すると、ガンギにまいた下肥は溝に流れ出ることはない。いまは下肥は使わないが、種蒔き前に水をまくことはある。また、種蒔きのあと強い雨が降ると、ガンギが溝側に決壊して、蒔いた種が流れだすことがある。だから、私はガンギを切るとき、中程を低くするとは別の工夫をしている。いずれにせよ、ガンギの長さは一定なので、中程を低くする、といった細工をしやすい。

 畝と畝との間は平鍬の幅だけの溝がある。元寄せする作物でも、土は畝の内部の土を使うので、溝の幅は変わることはない。人によっては、溝の幅が狭いと歩きにくい、と言って広くする人がいるが、溝の幅を広くすれば、それだけ、畝の幅が狭くなる。何畝も並んでいると、溝の幅次第で畝数が増減しうる。老人に聞くと、昔は溝をあげる鍬はいまよりもっと幅が狭かった、と言う。狭い農地をいかに広く使うか、という小農の苦労が伝わってくる。

 縦ガンギにすると、畝がみな同じ幅で固定される。私は溝の両側に石を埋め、それを畝と畝との境の目印にしている。固定すると、連作障害を回避しやすい。畝幅が固定せず、作物ごとに畝の場所が変わるとなると、以前、同じ作物を植えた場所が特定しにくい。

 思いつく特徴を挙げると以上のようになる。

 横ガンギが一般的なのであろうか。近所では縦ガンギと横ガンギは混在していて、家によってやり方が異なっている。
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