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I字姿勢の合理性 【太極拳】
投稿日:2007-02-15(木)

 2月9日(金)の稽古は、弟子の一人が風邪で欠席。

 お師匠さんは、太極拳の記事に目を通したそうで、一ヶ所疑問の点を指摘した。以前の記事で、太極拳姿勢(背骨のS字をI字型に伸ばした姿勢)について書いた個所で、太極拳をやっていると内股になる、との師匠さんの言葉を引用したが、その点に疑義を示された。「ワタシ、内股になるって言いましたっけ。両足は平行にはしますが。」「ム…」と頭のなかでまず答えて「はい、訂正しておきます」と私はかしこまった。

 稽古中、お師匠さんは動きを止めた状態で弟子の体勢を確かめることがある。I字姿勢について、作り方のこつは掴めたつもりだが、実際の動きのなかで間違いなく実現することは私にはまだできない。だから、お師匠さんに「もう少し腹を引っ込めて」とか「胸をすぼめて」とか指示されることがよくある。体育館は寒いので着ぶくれ気味で稽古している。そこでお師匠さんは姿勢が怪しいと思われる個所を触って確かめて指示を出す。腹を押されると腹を引っ込め、背中を触られると背中を丸くする(言い換えれば、胸をすぼめる)、ということをやっていると、自分が粘土細工の人形になってお師匠さんにいじられているような変な感覚を覚える。

姿勢の合理性
(クリックで画像の拡大)
動作は左から右に変化する。右側で青い線は、右足の踵が地面を押す力が右手に伝わる経路を示している。身体の中を走る力線とも言えようか。左足にも青線が入っているが、その意味は、この姿勢では左足にも体重がかかっている、ということである。
 お師匠さんがある動作の説明をしているとき、I字姿勢についてあることが閃いた。指を上に向け掌を前に向けた手を、耳のあたりから前方に向かって押し出す動作がある。(図参照。図では右手を前に押し出している。)この動作は、小指の下の掌の部分で相手を突く動作である。だから、指より掌が心持ち先行して出て行かなければならない。さもなければ、弱い指の部分で相手を突くことになり、指にダメージを受けかねない。また、指はまっすぐ上に向ける。このとき、一番力が入れやすいからである。

 太極拳は本来、武術である。対戦相手がある。だから、相手の存在しない套路[型の練習のため一連の技を組み合わせたもの]でもつねに相手は想定されている。手の動きや姿勢は戦闘的意図に基づいた合理性をもっている。上に述べた手の動きは、手の平面が地面と垂直になり、かつ指がまっすぐ上を向いているとき、合理的なのである。

 こう考えていくと、I字姿勢は理解しやすく、かつ、作りやすいものになる。たとえば柱を押してみる。背中を丸め、腰を前に押し込むようしないと力が入らない。背骨がS字形では駄目である。I字姿勢はだから、向かって来る力に対抗するのに合理的な姿勢である。相手と戦う姿勢である。

 図の動作に即して言えば、こうである。動作は左から右に変化する。左手を、膝前を払うようにしながら左体側に移動し、やや遅らせて右手を前に押し出す。腰は進行方向に向かって回す。その一連の所作からなる上半身が、全体として前に移動する。移動は足の動きによる。右踵を少し外側に押し出すようにしながら、右膝を伸ばし、右足の力で前進する。すると、右踵が地面を押す力が、背骨を経由して右手に伝わる。言い換えれば、身体全体の力が右手掌に集中される。この合理的な力の集中に、I字姿勢は貢献しているのである。

 このように理解すれば、実際に動くとき、相手をイメージし、たとえば手で押すつもりになれば、背骨は自然にI字形になる。合理的なやり方とは言えないが、額で何かを押すつもりになっても、やはりI字形になる。

 お師匠さんにいじられ、お師匠さんの説明を聞いているうちに、このような姿勢の合理性に思いいたった。(お師匠さんいかがでしょうか、こんな理解は?)
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