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村便り:2016-07-29(金) エルブ・ドゥ・プロヴァンス
投稿日:2016-07-29(金)

一昨々日[さきおととい]の夜、ラタトゥーユ ratatouille を作った。成りすぎるズッキーニをどう料理しようか、と考えた挙げ句、出てきたレシピである。考えた挙げ句だから、もしかして、とご推察されるかもしれないが、その通り、じっさい一度も作ったことはない。さらに、これがラタトゥーユだと了解して、何かの料理を食べた記憶もない。


(クリックで画像の拡大)
ラタトゥーユ。
インターネットでレシピを検索してみると、或るサイトのレシピで挙げられている材料の夏野菜は、一つを除いて、すべて自給できた。タマネギ、ナス、ズッキーニ、セロリ、トマト、ジャンボピーマン(赤、黄)、オクラ、ニンニク。(セロリだけはない。また、ナスは、畑にはあるが、冷蔵庫に入っていなかったので、使わなかった。そして、カラーピーマンは色づいているのがなかったので、未熟な緑のものを使った。)ニンニクもある意味で、夏野菜といえるだろう。収穫は6月であり、すると今がいわば旬だからである。列挙して気がついたが、ニンニクとセロリを除き、他はすべて果菜類。たしかに夏野菜は、果菜類が多い。

味付けは至って簡単。塩と胡椒だけである。それに、トマトの酸味が加わり、食欲を刺激する。その意味で、トマトは調味料ともいえる。

調理も至って簡単。切った野菜をオリーブオイルで炒めて、トマト、塩を加えて、鍋に蓋をして、煮込むだけ。煮汁は野菜自体から出る。

フランス料理だけあって、さらに香草が加わる。ローリエ laurier とエルブ・ドゥ・プロヴァンス herbes de Provence。ローリエは畑の隅に生えている月桂樹からちぎってきた(月桂樹からちぎりとるのは当たりまえか 笑)。しかし、エルブ・ドゥ・プロヴァンスは、畑には生えていない。買いおきもない。


エルブ・ドゥ・プロヴァンスに注意を向けていると、遠い昔の記憶が蘇ってきた。最初は、かたまりのようにぼんやりと、それから、ゆっくりと次第に、いくらか明瞭に。

フランスで学生をやっていた頃、私と同じ学生寮(パリ第10大学-ナンテール-のキャンパス内にあった)に住んでいた日本人女性(ピアノを専攻する音楽学校の生徒だった)がいて、彼女がエルブ・ドゥ・プロヴァンスを好んでいた。いろいろな料理にそれを使った。(ただ、彼女が作った料理の中でラタトゥーユは思い浮かんでこない。)魚とか肉とかを焼くとき、その香草ブレンドを振りかけていたのを、断片的に思い出す。彼女は帰国する際(私は、と言えば、彼女よりずっと遅れて、さらに数年滞仏して帰国することになる)、エルブ・ドゥ・プロヴァンスを買い込んで持ち帰ったようにも思う(ただし、これは私が創作した記憶かもしれない)。

そのハーブは幾種類かの香草をブレンドしたものであるので、私には、何かまがいものめいたようなものに思えた。市販のカレー粉が、料理に合わせてスパイスをブレンドする手間を省いた、お手軽で何でも屋的な調味料ではあるが、ありきたりの味しか作り出さないのを、そのまがいものめいた印象を比喩的に説明するのに、引き合いにだすことができるかもしれない。しかし、彼女にとっては、その香草ブレンドは、どんな料理の上でも、一振りすれば、自分好みの風味を生み出す魔術的な調味料だったのかもしれない。

インターネットで調べてみると、そのプロヴァンス風の香草ブレンドが、ブレンドされた形で市販されるようになったのは1970年代以降だそうである。とすれば、彼女がそれを発見したのは、まだ新しい商品だった頃と思われる。

ラタトゥーユを調理しながら、エルブ・ドゥ・プロヴァンスにまつわる記憶を出発点として、彼女を核とした混乱した記憶を脈絡なくたぐりよせていた。

今度ラタトゥーユを作るときは、エルブ・ドゥ・プロヴァンスを使ってみたい。嗅覚が何かを思い出させてくれるだろうか。

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