村便り:2009-01-04(日) (白菜本漬け)
投稿日:2009-01-05(月)
白菜を本漬けするときは、塩少々のほかに、いくつかの《調味料》をふり入れる。唐辛子、昆布、するめ、柚子の皮である。その《調味料》は家で刻んで、白菜漬けのおいてある小屋にもっていった。
最後に柚子の皮を刻みながら、ふと思った。唐辛子の辛味はもしかすると柚子の酸味で中和されるのではないか、と。科学的根拠があるわけではないが、経験からしてそう思ったのである。私の学生時代は全国的に大学が荒れているときだった。或る日、大きなデモに参加した。機動隊に蹴散らされたデモ参加者たちは、大都会の闇で逃げたり反撃していたりしていた。機動隊は催涙弾をデモ参加者をめがけて水平撃ちで発射した。催涙ガスがあたりに充満し、眼からはとめどなく涙が流れだした。すると、誰かがレモンを渡してきた。「汁で眼を洗え。痛みが止まる。」レモンを眼の上で絞って垂らした。すると痛みが止まった。催涙ガスの成分とレモンの酢とが反応して、その成分が無力化されたのであろうか。その経験がよみがえったのである。
でも…… 酸っぱいのは柚子の汁であり、皮には酸味は(ほとんど?)ない。子どものころ、空腹しのぎに柚子の皮を食べたことがある。いっしょに遊んでいた年長の子どもが「おいしいけん、食べてみいや」と教えてくれたからである。じっさい当時の私にとってそれなりにおいしかったし、厚い皮は食べ応えもあった。今度はその記憶がよみがえり、刻んでいた皮を食べてみた。たしかにあの味である。子どもがそばのテーブルで本を読んでいたので「おいしいけん、食べてみんさいや」と渡した。子どもは食べたがらなかったが「まあ、話の種にちょっとだけかじってみたら」と促した。子どもはほんのわずかかじって、残りの皮とともに複雑な笑みを返した。いまの子どもにとっては、食べ物ではないようである。
ともかく、皮は酸っぱくないから唐辛子の辛味を中和することはない、というのが正しいかもしれない。
そんなことなどを考えながら、《調味料》を刻み、午後、白菜の本漬けをした。
今冬の白菜漬けの記事
・村便り:2008-12-24(水) (白菜漬け)
・村便り:2008-12-26(金) (白菜の仮漬け)
・村便り:2008-12-31(水) (今年最後の村便り)
(クリックで画像の拡大) するめを刻む。 単調な作業を背景に、視覚や嗅覚や味覚の印象がいろいろな夢想や記憶を呼び起こす。 |
(クリックで画像の拡大) 白菜漬けの素。 手前は、左からするめ、柚子の皮、昆布。向こうは、左から塩、唐辛子。 |
(クリックで画像の拡大) 白菜の本漬け。 《素》ないしは《調味料》を各段毎に振りかけ、白菜を樽に詰めていく。 |
でも…… 酸っぱいのは柚子の汁であり、皮には酸味は(ほとんど?)ない。子どものころ、空腹しのぎに柚子の皮を食べたことがある。いっしょに遊んでいた年長の子どもが「おいしいけん、食べてみいや」と教えてくれたからである。じっさい当時の私にとってそれなりにおいしかったし、厚い皮は食べ応えもあった。今度はその記憶がよみがえり、刻んでいた皮を食べてみた。たしかにあの味である。子どもがそばのテーブルで本を読んでいたので「おいしいけん、食べてみんさいや」と渡した。子どもは食べたがらなかったが「まあ、話の種にちょっとだけかじってみたら」と促した。子どもはほんのわずかかじって、残りの皮とともに複雑な笑みを返した。いまの子どもにとっては、食べ物ではないようである。
ともかく、皮は酸っぱくないから唐辛子の辛味を中和することはない、というのが正しいかもしれない。
そんなことなどを考えながら、《調味料》を刻み、午後、白菜の本漬けをした。
今冬の白菜漬けの記事
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