てつがく村コラム

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2002-04-13 ☆ 高菜漬け

灰ヶ峰を見ると、山桜は山頂付近でわずかに咲き残っているだけで、山腹を麓から、波のようなヴォリューム感のある新緑が覆いつつある。

高菜漬け−下漬け−
午前中は高菜漬けの下漬けをする。

一昨日(11日)の朝、畑に寄ると、高菜が薹立ちをはじめていた。8日の朝見たときには、まだ薹の立った株は一つもなかったので、それから3日間のうちに薹が立ったということになる。土曜日には畑仕事に来るが、それまで放っておけば、薹はどんどん伸びてしまう。予定外の仕事であったが、ともかく高菜を急ぎ収穫することにした。
高菜は本漬けにすることができる。しかし、いままで我が家では高菜の本漬けはしたことはなかった。おそらく村でも高菜を漬けるという習慣はないのではないかと思う。
もう5年ほど前になるだろうか、集中講義に来ていただいた人に高菜漬けの話を聞いたことがある。九州の山村の出身だというその人から、田舎で作っていた高菜の辛子漬けで包んだおにぎりはとてもおいしかった、という小さいころの思い出話をしてもらった。その時の集中講義は9月終わりだったから、まだ暑さが残っていた。暑くて食欲のないような時期でも、食欲をそそられた、といった話になったのかもしれない。
それ以来、高菜漬けをやってみたいと思い続けてきた。ただ、わたしには高菜漬けについての必要なノウハウが欠けていた。手元の漬け物の本を見ると、下漬けと本漬けの塩の量などは記してあが、漬ける時期については記載がない。白菜であれば、冬に漬ける。品種によるが、普通、白菜は年末までに完全に成長する。ところが高菜の場合は、冬は寒さに負けてほとんど成長をとめてしまう。外の大きな葉っぱは寒さにやられてしまう。だから冬に漬けても、貧弱な高菜しか利用できない。わたしは、だから、いつ高菜を収穫するのか、疑問に思っていた。ところが、他の本を読んでいたとき、たまたま収穫時期についての記載に出会った。その本によれば、春、薹が立ち始めたときに収穫して漬け物にする、とのことであった。

漬ける前の高菜

枯れた葉を取り除いた高菜

並べた高菜

並べた高菜に塩をふる

蓋をした高菜

最後に、枯れた葉で蓋をする

漬け菜類は3月になると薹立ちを始める。暖かくなると急に大きくなったと思うとすぐに薹が立つ。ところが、高菜は薹立ちが遅い。普通、4月終わりから5月始めにならないと薹が立たない。だから、冬の間は貧弱だった高菜は、薹が立つまでに、見違えるように立派になる。我が家では、いままで高菜は、外葉をかいて利用していた。薹立ちが遅いので、春先、青い葉の少ないときも利用できる。かき葉利用だと、たくさん作る必要はない。ところが、高菜漬けの仕方が分かってからは、作る株数を増やし、かき葉利用の高菜と漬け物用の高菜とを区別した。
一昨年、まず少量の高菜で実験した。実験は一応成功した(すなわち、食べられる漬け物ができた)。昨年、株数を増やし、本格的に試みた。ところが、下漬けの水が上がらず、失敗した。高菜を桶の中にぎっしりと並べなかったことと、重石が軽かったこととが失敗の原因だと思われる。
今年は、昨年の教訓を生かし、なんとか高菜漬けを成功させたいと目論んできた。しかし、危ないところで収穫時期を逸してしまうところだった。

収穫した高菜は、1、2日陰干しにする。思うに、しんなりとさせて漬けやすくするためである。
ついで下漬け。
最初に、外の枯れた葉を取り除く。塩は、高菜との重量比で9%の量を使う。まず、桶の底に、たっぷりと(底が白くなるくらい)塩をまき、高菜をきっちりと並べる。一段並べると、塩を振りかける。次の段は、下の高菜と直交する方向で並べる。このように、塩、高菜、塩、高菜という順序で漬け込み、最後の段に塩を振りかけたあとで、枯れた葉を使って蓋をする。水分の蒸発の防止と、漬け物と漬け物板との間の緩衝とのためである。最後に、重石をする。去年の失敗を反省して、重石は増やした。
うまく水が上がれば、本漬けの記事を2週間後までには掲載することができます。請御期待。

ブロッコリーとカリフラワーを自然畝に定植する
午後は、まずブロッコリーとカリフラワーの定植。3月31日に移植したもので、まだ本葉4枚程度であるが、早めに定植。畝は自然畝。

先週の農耕日誌に書いたが、自然農法を始めた当初の一番の問題は肥沃度である。昨秋、自然畝に定植したブロッコリー、カリフラワー、キャベツは肥料不足のため、収穫が思わしくなかった。カリフラワーは収穫なし。ブロッコリーは収量が少なかった。キャベツは春先、巻く気配を見せたが、やがて薹立ちしてしまった。期待した収穫がなかったのは、肥料不足に加えて、寒さが成育を阻害したのだと思う。秋に蒔く野菜は、成長が衰えたり止まったりする冬までに、肥料の力で、成長を促進しておく必要がある。ところが、肥料不足のため、緩慢な成長を続けていたところで寒さの時期になり、花蕾をつけたり、結球したりするだけの力を蓄えることができなかった、ということなのであろう。
自然畝に昨秋植えた作物のうち、なんとか収穫ができたものがあった。レタスとブロッコリーだが、それらは元肥を施した。去年春から始めた自然農法での短い経験で、畑の熟さない最初から不施肥では収穫のまったく期待できない野菜もあることが分かった。昨春に作ったレタスもその例である。貧弱な草姿のままで薹立ちしてしまった。(ちなみに、秋から冬にかけて作ったエンダイブは、小振りながらも、ある程度のものができた。隣の畝だったが、条件はほぼ同じだと思う。半年の経過が、畝の肥沃度に多少の変化を生じさせたのか。)厳密に言えば、肥料は自然農法では禁じ手であろうが、化学肥料を使わないで施肥を考えるのも、自然農法でのひとつの工夫だと思い、元肥を施した。
具体的には、定植する場所に直径10数cm、深さ15cmほどの穴を掘り、底にシャベル一すくいほどの、発酵鶏糞と発酵米ぬかを混ぜた元肥を入れる。肥料を土と混ぜたあとで土を戻し、定植する。

ブロッコリーとカリフラワーは、元肥を施し定植したあと、蝶を寄せつけないため、ネットで覆う。

トレビスの定植
トレビスの定植。本葉4枚を目処にして定植する。春にトレビスを作るのは2度目。初めての去年は育苗に失敗。発芽率が悪かった。露地で寒すぎたためと判断し、今年はビニール・トンネルの中に播種した。ものの本によると、春作る場合には極早生の品種を使う、とあるので、もしかするとトレビスは暑さに弱いのかもしれない。あるいは、春に作ると、すぐに薹立ちしてしまうのかもしれない。これも自然畝に定植。
トレビス(トレヴィス trévise)は、キク科の植物。大きさは、小振りな結球レタスといえるが、色は赤紫で、苦みがある。エンダイブやチコリもキク科だが、やはり苦い。いずれも生でサラダに使う(チコリには、煮る料理法もある)

トマトの移植
最後にトマトの移植。本葉2枚程度のトマトを、15cm間隔で移植する。これまでの育苗はビニール・トンネル内で行ったが、定植までは露地で育苗する。
(4月15日掲載)

 
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2002-04-07 ☆ 春たけなわ

今日は朝から井手[農業用水路]の作業がある予定だったが、昨日午後からの雨で、午後に変更になった。そこで、昼前に家族と共に村に来る。

くねりながら峠を越える山道沿いには山ツツジがあちらこちらに赤紫の花をつけている。4月始めに咲き始めた山ツツジはもう盛りを迎えつつある。
村に入ると車は正面に灰ヶ峰を見るような方角に走る。4月始め、やっと麓のあたりに咲いた山桜が、もう山の上まで開花している。灰ヶ峰には山桜が多い。遠くから眺めると薄桃色の花が山全体にばら蒔かれたように見える。桜の背景となる山のいまの色は、杉が植林されている部分を除き、淡い赤茶色をしている。冬枯れの色とは違うような気がする。もっとボリューム感がある。若葉が出る直前のふくらんだ木々の芽の色と言ったらいいだろうか。若葉にも赤茶色のものがある。山桜がそうである。春たけなわの山は、まるで全体が静かに燃え上がろうとしているかのように見える。
本当に春の歩みは速い。刻々と色が変化し、風景が変化するからいっそうのこと、速く感じる。しかも勢いがある。
それは、春の農耕の歩みと同じである。町からの訪問者であれば、春の目まぐるしい変化は景観にすぎない。しかし、農耕する者にとっては、自分自身の変化でもある。「追い出し牛」の嫌々ながらの歩みが次第に勢いを得て激しくなる。速くなった歩みは、仕事量の急激な増加であると共に、自分自身のいのち(息[イ]ノ勢[チ])の奔流でもある。まわりの生き物たちとわたしが一つとなって、共に現実へと生まれ出る、そんな一体感の感じられる時節である。

井手のU字溝
井手の作業とは、井手の一部にU字溝を入れる作業である。今日作業する井手には、毎春の井手堰の度に泥浚いに苦労する場所がある。井手は、いまはほとんどがコンクリートで固められているか、U字溝が入れられているかしているが、この井手は一部土のままのところがある。溝をコンクリートなどで固めるのは局所的な見地からは効果があるが、全体的に考えると必ずしもいい結果を生まない(「井手の水」)。しかし、狭い利害しか考えず、労苦の少ない方に流れるのが人である。今日の作業に出た人のなかにもわたしと同じ考えの人はいるが、わたしも含めて、つい目先の利害を優先してしまう。というか、誰かがU字溝を入れようと提案すれば、それに積極的に反対するだけの勇気はない。勇気はない、というのは、私自身の中にも易きに付く弱さがあることを自覚しているからである。いや、本当はそれでも勇気を奮い起こさなければ何も変化しないのだが、個人的な事柄であればともかく、他人も関係する事柄になると、何ものをも跳ね返すような毅然とした生き方をしていないと、なかなか勇気は出ないものである。
集まった総勢は8名。井手に関係する家のほぼ全員である。2年前まではわたしが最年少だったが、去年あたりから世代交代が始まった家があり、今回はわたしより若い人が2人出ている。うち実際に力仕事ができるのは5名。そのうちの最年長は70歳をこえたばかりの人。こういった仕事には通じているその人がリーダーかつ最前線になり、作業は進む。作業が進むにつれて暗黙のうちに配置が決まり、わたしは後方支援を担当する。U字溝を運んできて、作業する人たちに渡す。
経験者がいるといっても所詮は素人仕事、既存のコンクリート溝との接続部分に隙間ができたり、曲線部分などは継ぎ目がぴったりと接続できなかったりする。しかし、それが逆に、U字溝を入れてしまった負い目のせめてもの軽減になったりする。「まあ、このぐらいは、あいとってもええじゃろう。水が出入りするけん、ちょうどええわい。」そうは言っても、作業中に出てきた何匹かのドジョウたちが住処を失うのはたしかである。
午後1時くらいから本格的に始まった作業は夕方5時頃に終了した。それから例のごとく、酒屋の前に座り込んで、ビールを飲みながら歓談。

草が生えている方が畑らしい?
畑に帰ると、家族はわたしが帰るのを待っていた。収穫作業が終わったので、どこで作業をしているかとあっちこっちに探しに行ったらしい。心配だからというよりは、時間を潰すため、遅い土筆を探しながら散歩した、ということらしい。田圃にも行ったらしく、「レンゲがたくさんあったよ」と子どもが言う。休耕田に蒔いたレンゲはまだ花はつけてないが、地面から盛り上がるように繁っている。
家族と一緒なので帰りは急がなくてはいけないが、昨日蒔いたズッキーニにホットキャップだけは被せておくことにする。マクワウリには被せたが、ズッキーニの分は足りなかったので、今日来がけに買ってきた。草の生えた自然畝で作業をしていると、子どもがやってくる。「いまごろ、畑を掃除しなくなったね」と子ども。「掃除?」とわたしはきく。「草を抜いたりして。」子どもは説明する。「うん、いまは草と一緒に野菜を作っとるんよ。」何を思ったか、「そのほうが畑らしいね」と子どもがこたえる。たぶん、草が生えた畑を見慣れてしまったこともあるだろうし、また草が生えていれば、いろいろな植物や虫が見つけられるので、楽しくもあるのだろう。わたしにとっては、これで収量もそこそこに上がるようになれば、本当に楽しくなるのだが。大人は欲張りか。
(4月9日掲載)

 
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2002-04-06 ☆ ジャガイモ定植のための畝作り

自然農法畝を拡大したといっても、まだ自然農法には踏み切れない作物はある。ジャガイモや大根がそうである。ジャガイモは栽培に失敗すると1年間影響が出る。春ジャガは収穫後、次の春ジャガの収穫まで、1年間食べる。春ジャガの収量が少ない場合、冬から春にかけての食用として秋にもジャガイモを作る。それを勘定にいれても、収量があがらないと、半年くらいは影響が出る。
自然畝での秋ジャガイモ
昨秋、秋ジャガを自然農法畝で作ってみた。自然農法に移行して1年も経たない畝だったので、自然農法でのジャガの作り方の練習のつもりだった。元肥はなし。米ぬかと鶏糞の発酵させたのを追肥として2度施肥しただけであった。成育が悪いまま収穫期を迎えた。秋ジャガの場合、霜が降ると茎が枯れるので、そのときが収穫期である。掘りあげてみると、一株あたり食べられるくらいの大きさのイモはせいぜい2個であった。草勢からして予想していた通りの収穫であった。
自然農法の初期における土の肥沃度
自然農法の一番の問題は、土の肥沃度だと思う。
草の方は、慣行農法から転換期はたしかに、草の勢いに不安になったりするが、そのうち草が生えているのに慣れっこになり、しかも、畝に枯れた草が重なってくると、それが草の発芽を抑制し、慣行農法での経験から恐れていたほどには草は生えなくなる。
草に関してついでに述べると、草は、作物が負けそうになると、抜かずに刈って、その場に置いておく。しかし、わたしは今のところ、多年草に関しては原則「駆除」の方針で臨んでいる。耕起しないままにしておくと、セイタカアワダチソウとかタンポポとかスイバとかが生え始める。セイタカアワダチソウは放っておくと畑中に高々とはびこるし、一般に多年草は根が深く太いため、農作業の邪魔になるからである。
不耕起に関しては、土はふかふかでなければ、種が発芽しないし、根も伸びない、といった思い込み(だと、わたしは思うが)を捨てれば、すぐになじむことができる。自然農法の不耕起は、完全な不耕起ではなく、植物の根とかミミズとかの「生物的」耕起にまかせる耕起法である、と言えよう。自然畝で土を掘ってみると、それが実感できる。土中には根が伸びていて、掘りあげた土塊はその根につかまれて崩れないほどである。ミミズも増えている。畝の表面を覆っている枯れ草を除くと、土から顔を出したミミズによく出会う。肉眼で確認できる「生物的」耕起はこれくらいだが、微細な生物たちもそれに加わり、土の中にひとつの生態系、したがって、多様に「耕起」された世界が存在するはずである。
「生物的」耕起にまかせるがゆえに、施肥せずとも土は次第に肥沃となっていく。そして人が耕起すると、土はやせる(そうである)。土中の生態系が破壊されるからである。とはいっても、土中に豊かな生態系ができあがるまでには、時間がかかる。根も腐熟しなければ土を肥沃にしない。自然農法を始めて、2、3年しないと作物ができるようにならない、と言われるのは、土中の有機物が腐熟するのに時間がかかるからであろう。
だから、始めたばかりの自然農法畝はまだやせている。しかし、作物はそこそこのものは収穫したい。だから自然農法において、すくなくとも開始初期においては、土の肥沃度が問題になる。
始めた当初は、土が肥沃になっていくのを気長に待とうと思っていたが、すぐに待ちきれなくなった。それで肥沃度を増すため、あるいは補助するため、いくつかの手段を講じることになった。この点に関しては、別に書こうと思うが、うまい手段が見つからず、しかも、不作の影響が大きい作物の場合、当分慣行農法で対応することになる。最初に書いたように、ジャガイモがその例である。

さて、今日はジャガイモを定植する畝を作る。ジャガイモは3月半ばに伏せると、4月半ばに定植適期を迎える。種芋の数が多いため、定植には時間がかかるので、定植を1日で済まそうと思うと、1週間か2週間前には畝を作っておく必要がある。すると、計算上は今日あたりが畝作りのタイムリミットである。天気予報によると、午後から雨。そこで朝早く起きて、7時半頃から畑で仕事を始める。
草の多い畝は、最初に草を刈る。刈った草は自然畝に入れる。カラスノエンドウが繁っているところもある。野菜のエンドウはまだ花をつけていないが、カラスノエンドウはすでに蕾をつけている。草をあらかた刈ったあとで耕耘機で耕起して畝作りをする。
雨は朝からときにぽつりと落ちていた。午後からの雨は確実。したがって、昼食抜きで、雨の降るまで作業を続けることにする。ジャガイモの畝作りをしたあと、マクワウリとズッキーニを蒔く。いずれもホットキャップを被せる。
午後2時半。雨は本格的になり、作業を中止。7時間ぶっ続けの作業はさすがに疲れる。腰が重い。ほとんど痛い。
(4月9日掲載)

 
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2002-04-03_05 ☆ 早朝の種蒔き

週間天気予報を見ると、土曜日が雨になる、という。すると、週末は種蒔きができない。しかし、4月始めに蒔いておかなければならない種がたくさんある。しかも、3月下旬に蒔けなかった種もある。自分で食べるものは、自分で作る。作れなかったら、食べない。これが一応、わたしの二足草鞋農耕の原則である。ところが、蒔かぬ種は生えぬ。そこでスケジュールが詰まってくると、少しばかり無理をしなければならないことがある。

本業の勤務時間の前後に農作業を入れる。別にわたしだけのことではない。兼業農家は農繁期にはよくやることである。いつだったか、また何の作業をやるためだったか忘れたが、田植え時、平日に朝早く田圃にでたことがあった。その日は霧が出ていた。だから遠くは見えなかった。田圃に近づくと霧のなかから低いエンジン音が聞こえる。さらに近づくと、霧のなかから赤いトラクターが見えてきた。隣の田圃のお兄さん(わたしより10歳ほど年上)が、田植えの準備をしていたのである。わたしは平生は村に住んでいないため、朝早い村の情景はあまり知らないので、正直驚いた。こんな早くからトラクターを動かしているとは思わなかったからである。彼は朝の仕事を終えると、トラクターを田圃に置いて帰って行った。
隣のおばあさんが話してくれたわたしの祖父も、そんなふうに働いていたようである。早朝、田圃で働いて泥だらけになりながらも、出勤時間になるときちんとしたみなりをして、徒歩で1時間はかかる町の勤めに出かけた。隣の田圃のお兄さんにしても祖父にしても、肉体的にきつすぎる。しかし、二足草鞋はときにそんなきつさを要求される。
わたしの場合は、そこまできついスケジュールでは働かない。それでも、時折、早朝とか夕方の1時間ほどをちょっとした農作業に費やす。

3日(水)から5日(金)まで、朝種蒔きをした。5時に起きて畑に寄り、種蒔きをして出勤する。塵も積もれば山となる、のたとえ通り、1時間の作業でも3日やると大分種蒔きができる。畑はあらかじめ準備し、種を蒔けばいい状態にしてある。蒔いた種を挙げてみれば、

半白キュウリ、調理用トマト、トマト、長ナス、タイ唐辛子、鷹の爪、ニガウリ
以上は、子芋とサツマイモを伏せたビニール・トンネルの中に蒔いた。踏み込み温床にしているのは子芋とサツマイモの部分だけだが、その部分の熱がビニール・トンネル全体に回るため、温床に似た環境で育苗することができる。
唐辛子は今までは露地で育苗していた。ところが、去年はじめてタイ唐辛子を作ったところ、同じときに播種した鷹の爪は赤く熟したのに対し、タイ唐辛子は熟さなかった。おそらくはタイ唐辛子は、成熟のためには、鷹の爪より長い日照時間が必要なのだろう。そこで、今年は温床で育苗して初期成育をはやめてみることにした。

青ネギ(九条ネギ)、下仁田ネギ、ポワロ(西洋ネギ)、ニラ
これらは露地に蒔く。1cm間隔の条蒔き。条相互の間隔は10cm。ばら蒔きでもいいが、除草のときに困る。蒔いたあと、種が小さいので、篩で土をかける。さらに藁で被覆し、乾燥防止をする。ネギ類は好暗性の発芽をするので、藁を被覆しても発芽には影響がない。ただ、発芽し始めるとすぐに藁を取り除かないと、苗が徒長する。

マクワウリ、ズッキーニ
ホットキャップ内に蒔く。これらは自然畝に蒔いた。

種蒔きが終わるとはればれとした気持になる。これで食べることができる、という楽しみに似た安堵と、決めたスケジュールがこなせた、というある種の達成感とが入り交じった気持ちである。
(4月8日掲載)
 
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2002-03-31 ☆ 子芋とイモを伏せる

子芋とイモ[イモと言えば、村ではサツマイモをさす]を伏せる。
踏み込み温床は、3月26日に藁を踏み込んでビニール・トンネルで被覆してある。藁を触ってみると発熱を始めたように思える。本当はもう少し発熱させてから土を入れたいが、今日芋類を伏せなければ、今度は1週間先になるので、見切り発車。

子芋を伏せる

子芋を伏せる
左の小さいのが子芋、右の大きいのが親芋。親芋の手前に、二つに割った親芋を二つ並べている。白く見える芋が、それである。
子芋[里芋]の伏せ方
土を入れた伏せ床に、子芋は、芽の出る方を上にして、ジャガイモ同様、びっしりと並べる。芽が出る方は、親芋につながっている部分と反対の端。皮をよく見ると、芽が出る部分を中心に同心円状の模様が確認できる。この時期になると、芽が出始めているのもある。その場合は芽を傷つけないように注意しながら、並べる。親芋も立派な種芋になる。親芋はいくつも芽が出るので、縦に二つに切り分けてから、切り口を下にして伏せる。並べ終えると、3、4cmほど土をかける。灌水し、乾燥防止のため藁で覆う。
サツマイモの伏せ方
サツマイモは、前回のコラムに書いたように、芋を半分地面に突き刺すように伏せてもいいようだが、今年は今までどおり、横において両端は土から出るように土をかける。ただ、来年以降のことを考えて、発芽するのは、ツルにつながっていた端かそれとは反対の端かを、確認できるように並べた。その上から、前回のコラムの人に倣って、スクモをかけておいた。
種芋を伏せた後、むろんビニール・トンネルをぴったりと閉じる。

キャベツ類の移植
ついで、3月3日に蒔いたカリフラワーとブロッコリーを移植する。キャベツも含めて、本葉2枚のときに移植し、本葉5枚までに定植する。移植するのは、苗を管理するのは面積の限られた育苗畝の方がやりやすい、という以外に、強い苗を作るため、とわたしは理解している。幼苗期のキャベツ類は強い。抜いて根から土を落としても、主根を少々切り落としても、活着する。移植という逆境に会うと、その活力がよけいに発揮され、強い根を出すのではないかと想像する。主根を3分の1くらい切り落として、斜めに植えると、根量が増える、と書いてある本も読んだことがある。
苗は12cmほどは間隔をあけて移植する。(ちなみに、種は3、4cm間隔で蒔く。)移植した後は灌水し、できれば、乾燥防止のために、株間にスクモか切り藁を撒く。キャベツ類は、播種したときから必ずネットを被せる。さもないと、蝶が卵を生み、青虫の餌食となる。

大根の播種
最後に大根の播種。昼前通り雨がやってきたので、畑の状態が悪い。種を蒔いても、かけ土[覆土用の土]がない。かけ土は乾いていないと使えないからである。そのとき、ふと3月13日のコラムに書いたおばさんの話を思い出した。かけ土のないような湿田にも麦を蒔き、かけ土の代わりに、スクモやゴミを撒いた、という話である。大根は発芽しやすい。そこで土のかわりに、スクモを十分にかけ、さらにその上から藁堆肥を振りかける。これでおそらく土をかけたのと同じくらいの保湿効果はあるはずである。さらにその上から、べた掛け用資材を掛けて、土の保湿性を高めると同時に、スクモや藁が風で飛ばないようにする。うまく芽が出れば、自然農法での大根類の播種に応用できそうな気がする。
(4月3日掲載)

 
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