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ひろば(BBS)

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2003-03-20 ☆ 踏み込み温床
(旧暦 218日)
(この記事には続編「続・踏み込み温床」があります。)

−温床の作り方と種の蒔き方−踏み込み温床の管理の難しさ

長ナスや調理用トマトは自分で苗を作っている。4月始めに踏み込み温床を作り、そのなかで苗を育てる。農耕を始めたころは、子芋の芽出しとサツマイモの育苗のために温床を作っていた。当時生きていた父が、同じ温床でナスなどの苗も作れると教えてくれたので、ついでに、ナス、ニガウリ、キュウリ、トマトなどを育苗するようになった。ナスやトマトは5月になると定植できる。しかし、ナスなどは育苗期間が2-3カ月ほど必要なので、4月始めに種蒔きをしたのでは、5月には定植できない。だから、ナス、トマト、ピーマン、シシトウは苗を購入していた。5月始めに購入し、しばらく養生させたあとで、5月中下旬に定植する。そして、自分が育てた苗は、それから1ヶ月ほど遅れて定植する。
ところが今年は今まで購入してた苗も自分で作ろうと思い、今までより1ヶ月早い3月始めに踏み込み温床に、中長ナス、ピーマン、シシトウ、トマト(すべてナス科)の種を蒔いた。今日の話題は、その温床育苗である。

踏み込み温床
踏み込み温床の作り方

まず、畑を長方形に掘る。深さは堆肥の厚さ(本文参照)と同じくらいが望ましいが、わが農園は20-30pも掘ると赤土層に突き当たるので、それ以上は掘らない。
つぎに、竹の枠組みを作る。高さは、堆肥の厚さより高くなるようにする。写真の枠組みは、底から60pほどの高さである。また、底面は、90cm×180cmである。
その枠組みに藁を絡みつけて(藁の編み方は近日中に図で掲載します)、藁製の側壁を作る。写真は、作りかけの状態である。
枠が完成したら、その中に堆肥を踏み込む(本文参照)。わが家の場合、藁が主体の堆肥である。踏み込む厚さは、今回は40pだった。
最後に、温床全体をビニールでアーチ状に被覆する。
 
温床の作り方と種の蒔き方
現在では温床の熱源として電気が使われる。家庭菜園用の小型電気マットも売っている。マットの上に育苗箱をおけば、発芽に必要な温度が得られる。しかし、私は昔ながらの踏み込み温床で育苗している。
踏み込み温床は、堆肥の発酵熱を利用する。枠を作り、その中に藁、枯れ草、落ち葉、野菜残さ、青草などを踏み込んで、ビニールなどで覆いをする。踏み込み方は、堆肥を作るときと同じである。材料をしっかりと踏む。材料が乾いているときには水をまいて湿らす。数pの厚さになったら、発火剤として鶏糞とか米糠をまく。窒素分が発火剤になるので、化学肥料でもいい。それを繰り返して、厚さ50cm前後にする。なお、堆肥の場合、1mから2mの高さに積む。堆肥の底面は、正方形にして、一辺を高さよりやや長めにする。(堆肥については関連記事があります。ここをクリックしてください。)
堆肥が発熱してきたら、種蒔きをする。発熱してきたところを見はからって20pくらいの厚さに土を入れ、そこに播種してもいいし、育苗ポットを使ってもいい。今までは土を入れていたが、今回は育苗ポットにしてみた。1セット、100円あまりの紙ポットを使う。60個から70個のポットが蜂の巣のようにつながっている。そのポットは、稲の育苗箱(28cm×58cmの長方形の形をしている)にぴったりあう大きさに作られている。育苗箱に広げて土を詰め、種蒔きをする。

踏み込み温床の管理の難しさ
踏み込み温床は、温床を作るときにも育苗するときにも手作りの楽しさがあるが、熱の管理が難しい。堆肥は踏み込んでから1週間ほどすると発熱を開始する。最初はかなり高温である。(書物によれば、発酵熱は、本格的な堆肥の場合、60度をこえ、踏み込み温床のような小規模なものは、40-50度である。また、厚さ60p程度の踏込み温床の発熱持続時間はせいぜい1ヶ月である。)しかし、しばらくすると次第に冷めていく。盛んに発熱しているときは、ビニールを少しあけて温度を下げてやらなければならない。逆に、寒い夜はこもなどをかけて防寒してやる(もっとも、私はやったことはないが)。発熱してなくても、天気のいい日などはビニール被覆内部は高温になるので(50度くらいにはなる)、その場合にもビニールをあけて温度を調節する。理想は、いつも温床内の状態に注意を払うことである。
しかし、私のようにサラリーマンもする二足草鞋の、しかも通いの百姓には、温床の管理は行き届かない。堆肥はしっかりと発熱した。しかし、3月は全般に寒かったので、発熱してから1週間ほどたち熱が落ち始めると、温床内に発芽に十分な温度が確保できなくなった。寒い朝などは、前日の昼間ビニールの内側についた水滴が凍っていたこともあった。ナス科の発芽最低気温は10度、適温は20度から30度であり、好暗性の発芽をする(光が当たると発芽しない)。好暗性なので、防寒をかねて発芽までは藁を被せておいた。それでも温度がうまく確保できなかったのであろう、結局、発芽が始まったときには、播種して半月が経っていた。
最初に発芽したのはトマトである。トマトは比較的低温で発芽する。だから、温床の効果があったかどうか疑わしい。ビニール被覆だけでも、同じくらいで発芽したかもしれない。それでも半月待っただけに、発芽を確認したときは嬉しかった。トマトから2日遅れでナスが発芽し始めた。いよいよ、他の種も発芽し始めたかと、喜びがふくれあがった。ところが、トマトを見ると発芽したはずのポットにそれらしい姿が見えない。よく見ると枯れていた。2日間の気候を考えると、発芽したばかりのトマトが低温にやられたのかもしれない。ナスの発芽をした日の朝は霜が降りていたから、気温は氷点下になったはずである。ふくれつつあった喜びは、すぐにしぼんでしまった。

作物の発芽や生長に一喜一憂する。もえあがる春から大気が結露する秋に向かって、人の、心もからだも勢おう農耕の季節が、いよいよ始まったのである。

 
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