天地人籟タイトル  
 
サイト内検索
 
▲次の記事
●記事一覧
▼前の記事
 
村の入り口
(TopPage)
 
 
ご感想やご意見は ...

ひろば(BBS)

e-mail
2003-01-05 ☆ 白菜漬け
(旧暦 123日)
(この記事には続編「白菜漬け後日談」があります。)

−白菜の囲い方−白菜漬けの本領−白菜漬けの実際−白菜漬けはやはり冬

一昨日、年末に漬けた白菜を初めて食べてみた。心配していたほどは塩辛くなく、安心した。
沢庵は漬け始めて8年になるので、漬け方のコツも分かってきたし、自分なりの味もできたが、白菜は自分では一度も漬けたことがなかった。そこで、今冬は白菜漬けに挑戦した。白菜は8月終わりか9月始めに種蒔きする。すると11月終わりには、収穫するのに十分な大きさになる。その時点で白菜は漬けることはできるのだが、わたしの場合、学校が冬季休業に入ってからでないと、なかなか気分的に余裕ができないので、初挑戦の今回は12月の下旬になって漬けた。

白菜の囲い方
白菜は11月終りから3月終わりくらいまで食卓にあがるが、春先まで生野菜として保存しておくには、或る程度手間をかけてやらなけれはならない。

防寒した白菜
防寒した白菜
白菜の外側の葉っぱは大きく広がっている。その葉っぱで結球している部分を覆う。覆いの葉っぱが垂れ下がらないように、頭の部分を縛っておく。写真の白菜は、稲藁3、4本を紐にして結わえてある。
まず、年度内に、すなわち、寒さが厳しくなるまでに、外葉で包んでやり、防寒する(右の写真)。そうしないと、寒さにやられて葉っぱが外から枯れていき、食用にする部分である結球部分が細っていく。
防寒してやれば、村の気候なら、しばらく圃場で囲っておくことができる。しかし、それも2月半ばまである。立春を過ぎて、寒さが和らぎ日が長くなると、白菜の中で花芽が動きだす。すると葉っぱの質が落ちてしまう。そこで、今度は抜き取って囲う。
(すべて抜き取らず、小さいものとか、結球しなかったものとかは、圃場に残しておくと、春に菜の花が食べられる。白菜の花はおいしい。)
圃場から移動するとき、刃物などで根元を切るのではなく、根ごと抜き取る。父からそうするよう教わったのであるが、その訳は、根元を切ると、切り口から菌が入って白菜が腐ることがあるからであろう。その頃には、外側の葉っぱは水分を失い、薄いパラフィン紙のようになって白菜にくっついてしまっている。その葉っぱは中の水分が抜けるのを防ぐので、そのままにして、さらに新聞紙で全体を包む。そして上下逆さまにして湿気の少ない屋内に立てておく。上下逆さまにするのも父から教わったのであるが、その理由も聞かなかった。もしかすると、逆さにすると花芽が出にくくなるのかもしれない。経験上分かったもう一つの理由がある。横にして保存しておくと、接地面から腐っていく。接地面が少ない方が腐りにくい。上下逆さまにした場合に、接地面が一番少なくなる。そのために上下逆さまにするのではないか、とも考えている。(「湿気の少ない屋内」と書いたのも、腐敗しにくくするためである。)
このように手間をかけても、4月に入ると腐ってしまう。

白菜漬けの本領
白菜の漬け物は白菜をできるだけ長期に利用するためのものだろうか。白菜は、広島菜や高菜のようには長期保存できないような気がする(なにしろ初めての経験なので、どのくらい保存できるのか分からない)。古漬けではなく、新鮮な漬け物として食べるという印象がある。(それでも2月に漬けて、塩を多めに使えば、生で囲っておくよりは長く利用できるかもしれない。)
白菜は生で利用するだけだと、なかなか消費できない。我が家のような3人家族だと、ひとつ採ってくると食べ終わるまでに、半月以上、食べ方によると1月くらいかかる(毎日、鍋物をすれば別だが)。ところが、漬け物にするとけっこう量が食べられる。1週間で1個分は食べてしまうことができる。余分な水分が抜けて軟らかくなっているうえに、塩味が食を進ませるからである。しかも白菜漬けの旬は冬のような気がするので、結局、白菜漬けとは新鮮な白菜をおいしく、たっぷりと食べるための方法である、と定義できるかもしれない。

白菜漬けの実際
さて、白菜漬け初挑戦の顛末を報告しておこう。

まず、仮漬けを12月22日に行った。原料の白菜は22kg。個数にして、普通大のもの、10個と小さいもの、2個である。塩加減などは次の通りである。(塩加減を決めるにあたっては、『家の光 昭和41年9月号』付録「漬けもの365日」を参考にした。)

白菜 : 20kg
塩 : 800g(白菜との重量比、4%)
差し水 : 水1liter+塩80g
重石 : 30kg(たまたまあった重石を重ねたところ、この重さになっただけで、とくに根拠はない。)
白菜漬け
仮漬けのため桶に詰めた白菜
白菜は、外側の汚れた葉を取り除く。外側の葉の根元には土が挟まっていることが多いので、かたく結球している葉の手前まで取り除く。これで大丈夫と思われるところまで取り除いたら、残った葉の一番上を軽く開いて、土が挟まっていないのを確認する。そして、根元の土は洗い流しておく。白菜漬けは、沢庵漬けと違い、食べる前に洗ったりしないので、清潔に漬けることが大事。(市販の白菜は外葉がきれいに取り除いてあるので、そのまま漬けても大丈夫かもしれない。)
白菜は根元に十字の切れ目を入れ(塩がしみやすくするため)、ひとつの切れ目から二つに割る。わたしは包丁で二つに割ったが、母は手で二つに割っていた。なぜ手で割るのか、母に訊いても納得できるような理由を教えてもらえなかったが、そうした方が、割れ目が凸凹になり塩がしみやすくなるのかもしれない。また、ある人から聞いたところによると(その人は、昔、農家のおばあさんから教えてもらったそうである)、包丁で切ると葉の先で切れ端が出やすくなるが、手で割ると出にくい、ということである。
まず塩を桶の底にまき、白菜を切断面を上側にして並べる。その上から塩をまき、また白菜を並べる。その場合、下の白菜と並べる方向が同じにならないようにする。方向が同じだと、下の層の白菜の間に上の層の白菜がはまり込むことがあるからである。全部並べ終わると、最初取り除いた外葉をきれいに洗ってから、それで上を覆い、蓋にする。最後に押し蓋と重石を置く。

3日後の25日に水が上がった。その時点で重石を半分にする。

水が上がって3日目の27日に本漬け。
まず、白菜を桶から取り出し、桶に残った塩水は捨てる。ついで、白菜を、次のような配合の素を振りかけながら、仮漬けと同じ要領で桶に詰める。

白菜 : 20kg(仮漬け後の重量ではなく、原材料のそれ。)
塩 : わずか
重石 : 15kg(重さは適当)
唐辛子 : 5g
昆布 : 20g
するめ : 1杯(ただし足は除く)
柚子の皮 : 2個分

参考にした本には、塩は、原料との重量比で、0.8%から2%と書いてあったが、仮漬けの白菜を試食してみると十分に塩辛かったので、塩は気持ちだけしか振らなかった。
唐辛子以下の材料は細く切る。また、昆布以下の材料は任意。

漬けたあと、水はすぐにあがり、数日後から食べられる。

白菜漬けはやはり冬
白菜漬けは屋敷の納屋に置いてある。白菜を取りにいった一昨日は、一日中小雨がぱらつく曇天だった。しかも、広島市内でさえ最高気温が4度程度の寒い日だった。
わたしは午後3時過ぎに自宅を出て、いつものルートをとって村に向かった。本庄水源地から山道に入り峠を越すと、山間の村が眼下に見えるようになる。しかし、その日は、峠を越すと突然濃い霧があらわれ、見えるはずの村は霧のなかに沈んでいた。そこまでもスモールランプをつけて走ってきたが、霧の濃さに、黄色の前照灯をつけた。
屋敷に近づくと、柿の木が黒く霧のなかに浮かび上がった。大きく枝を広げている西条柿の木にはもう熟柿は残っていない。横の、もう一本の渋柿の木に目を向けると、車の音に驚いて鳥が一匹飛び立った。ヒヨ(ヒヨドリ)である。その木にも熟柿はひとつもなかった。枝にはへただけがいくつもついていた。たしか年末にはまだかなりの数の熟柿が残っていた。12月になってからのこと、隣家の渋柿の木にヒヨが群れをなし、熟柿をあさっているのを見たことがある。だから、おそらくはヒヨのしわざである。熟柿が終わると今度は南天の実である。木の実を食い荒らし、それでも食い足りなければ、畑の野菜を狙いに来るだろう。
屋敷についた。車から降りるとさすがに寒い。雨も降っていた。家の南天を確認したが、まだ食い荒らされた形跡はなかった。畑にも目をやった。キャベツなどは、ネットで防鳥しなければならないだろう。
漬け物桶から重石を取り除いた。白菜は塩漬けなので、漬け水は澄んでいる。手を入れると凍るように冷たい。その水につかっている白菜は、中心部では黄色、上半分の周辺部は青い葉でわずかに彩られている。わたしは、二切れ(つまり、1個分)を取り出した。一瞬、柚子の香りがする。一切れずつビニール袋にいれた。ひとつは我が家のため、もうひとつは老母のために。
白菜漬けはやはり冬である。

 
先頭に戻る
 


てつがく村
depuis le 1er avril 2000