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2005-09-07  ベランダ・ポット育苗

《「通いの一人兼業農家」の条件を生きるために思いついたのが、ベランダ・ポット育苗である。この記事では、その利点と技術を述べる。》
- 移植作業の簡略化;- 灌水と防虫;- 作業の実際



移植作業の簡略化
たとえばキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーといった作物は、普通、播種→移植→定植という栽培手順を踏む。播種後、本葉2枚で移植し、本葉5枚程度で定植する。また、上に上げたアブラナ科の作物は冬以外は青虫の食害に遭う。したがって、発芽してからは防虫対策をしなければ、まともな収穫は期待できない。販売用に栽培する場合には殺虫剤を撒布する。自家用の少量栽培の場合は、殺虫剤を使わなくても、防虫ネットで覆っておけば、モンシロチョウが卵を産みつけることはない。このように手間のかかる育苗が簡略化できれば、私のような条件の農民にはとても助かる。

キャベツなどの育苗の場合、移植と定植の二回植え替えをするのは、幼苗を集中管理する目的以外に、強い苗を作り収量をあげる目的もあると思っていたが、或る園芸雑誌に、実際には植え替えすることで収量はむしろ落ちる、と書いてあった。そこでポット育苗し、移植は省略して、定植する栽培方法でも問題ないと考えた。(実際、大量栽培の場合、専用トレーに育苗して、機械で植えつけをしているようである。)すると、作業が省力化できる。


灌水と防虫
ポット育苗は、それまでにも、白菜(アブラナ科)やレタス(キク科)で行っていた。白菜は幼苗期の害虫対策のため(直播きすると、発芽しても、ダイコンサルハムシに食害されて消えてしまう)、レタスは集中管理のためである。稲の育苗箱にちょうどおさまる市販の紙ポット(ポットは枡目状につながっており、底はない)に土を詰めて播種する。白菜やレタスは苗は小さいので紙ポットのような小さな枡目でも育苗できる。しかしキャベツ類は定植適期の苗になると、そのような枡目では小さすぎる。そこでポットは様々な大きさが選べるビニール・ポットを使うことにした。(紙ポットは、二種類かなく、いずれも小さな枡目である。)

しかも、ビニール・ポットであれば移動も可能である。紙ポット育苗の場合、育苗箱はそのまま畑におく。乾かないように毎日灌水してやらなければならないが、、私の条件では、灌水が行き届かなくて、せっかく発芽した苗を枯らしてしまうこともしばしばあった。ところが、ポットを移動して自宅(街中のアパート)に持ちかえり、ベランダで育苗すれば、灌水の管理は行き届く(したがって、畑に行く時間が節約できる)。しかも、自宅は四階にあり虫が飛来することがないので、防虫対策をする必要がない。

こうして、省力と確実な育苗が可能なベランダ・ポット育苗を始めた。


(クリックで画像の拡大)
 稲の育苗箱に並べた7.5cmのビニールポット。
 奥の2箱に並べたポットには乾燥防止にもみ殻が撒いててある。もみ殻は絶対に必要というわけではない。好光性の発芽をする種の場合は、私は発芽まで保湿性のある被覆材で覆う。
作業の実際
ポットは、上に挙げたキャベツなどアブラナ科の場合、7.5cmのものを使う。(7.5cmは、ポットの上面の直径。)土を詰めたポットは稲の育苗箱に並べる。持ち運びに便利だからである。箱には7.5cmポットだと、ちょうど32個が入る。また、白菜やレタスは今ではビニール・ポット育苗をしており、その場合は、5cmのものを使う。このポットだと、箱に50個が入る。

ポットに詰める土は農協で購入する。1袋に肥料入りの土が20kg入って900円であり、1ポット(7.5cmポット)あたりの値段を計算すると10円ほどになる。畑の土を詰めてもいいのだが、手間や土の品質を考えれば、10円は高くないだろうと判断し、「JA培土」を利用している。

ポットに八分目ほどの土を詰めて、一度、灌水したあとに種蒔きを行う。この育苗法だと発芽率が高くなるので、アブラナ科の場合、1ポットに2粒で十分である。レタス(キク科)のように、好光性の発芽をするので覆土は(ほとんど)しない種の場合は、安全のために3粒蒔くことにしている。

種蒔きの後は種に土を被せる。この覆土は手で行ってもいいが、私は、土の厚さを均等にしやすいストレーナーを使う。(ストレーナーとは、料理用の漉し器のこと。半球状のざるで把手がついている。私の使っているのは金属製。)以前は、砂にも耐える金属製のふるいを使っていたが、土が広範囲に散らばり無駄が出るので、的確にポットを狙えるストレーナーに換えた。

種蒔き後、再度灌水すると、種蒔きの完了である。



ベランダ・ポット育苗で育苗している作物は、上記以外に、トレヴィス、セロリアク(根を食べるセロリ)、オクラ、キュウリなどである。たとえばオクラは移植を嫌う、と言われているが、そのような作物でも本葉が四、五枚になり、根がポットに十分に張った時期に根鉢が崩れないように注意して定植すれば、活着に支障ない。(あまり小さいうちに定植すると、根が張っていないので、根鉢が崩れやすい。)



ベランダ・ポット育苗は、私流の自然農法の一技術としても活用しているが、その件については「ポット育苗」を参照いただきたい。
 
 
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