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ひろば(BBS)

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2005-10-12 ☆ モチの稲刈り・稲架掛け

《今年はモチだけは自分で稲刈りをした。来年以降、稲刈りは、今まで頼んでいた人にはもう委託できないので、自分でやることなるだろうが、コンバインを使おうかバインダーを使おうか、迷っている。稲刈りをしながら、考えてみた。》
- コンバインかバインダーか- 久しぶりの稲刈り、稲架掛け- 自然乾燥か強制乾燥か- 来年の稲刈りは?


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 バインダーによる稲刈りは感覚的に、手刈りに近い。刈り取りと結束が機械化されているため作業が大幅にスピードアップするが、稲を見下ろしながら刈り取る乗用のコンバインと違い、稲との距離が近い。
 コンバインで刈り残しが出た場合、刈り取り途中であれば、刈り取ってコンバインに入れることはあるが、少量の場合、ついそのままにしてしまう。ましてや、稲刈りが終わってから、わずかな刈り残しを刈り取ったり、落ち穂拾いをしたりすることはない。だからコンバインの走ったあとは、どうしても少量ながらも穂が田圃に残ってしまう。コンバインに踏まれ、泥だらけになっているものもある。
 しかし、バインダーの場合は、刈り残しを刈り、落ち穂を拾う。そして、多量であれば、別に藁を紐にして束にし、少量であれば、稲束に差し入れる。稲との距離が近くて残っているのが見えてしまうから、また、あとから穫っても作業過程に追加することができるから、どうしても穫り残すまいという気持ちになってしまう。
 久しぶりに稲刈りをして、手刈り時代、穂が一本でも落ちていると、それを拾っていたのを思い出した。

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 稲架掛けした稲。稲刈りの翌朝。
10月2日にモチの稲刈りをした。

去年までは、田植と稲刈りは全面的に委託していた。しかし、今初夏、田植え直前に、それまで委託していた人が脳梗塞で倒れた。その人は、驚くべき回復力を見せ、いまでは日常生活に支障がないところまで回復している。しかし、農作業を委託できる状態にはない。そこで、ウルチ(作付面積は1反8畝)は別の人に、今年だけという約束で、コンバイン(*)で収穫してもらうことになった。しかし、乾燥機に入れるには量が少なすぎるモチ(作付け面積は3畝)は、私がバインダー(*)で刈り取ることにした(聞いたところによると、米の量が少なすぎると乾燥に時間がかかるそうである)。
(*)コンバインは、刈り取りと脱穀、さらには藁の切断を一度に行う機械であり、乗用型である。それに対し、バインダーは、刈り取りと結束を行う機械であり、歩行形(機械の後を人間が操作しながらついて歩くタイプ)である。

コンバインかバインダーか
八月だったか、JAの農機センターに行って、稲刈りについて相談をしたことがある。将来的には田植も稲刈りも委託せず、自分自身でやろうと思っていたが、予期しなかったアクシデントのため稲作の「自立」を前倒しし、今秋の稲刈りから始めなければならないような状況になったからである。

揃えるべき機械について、わが家の事情を知っているセンターの人は、「おたくは一人じゃけぇ、コンバインじゃないといけんじゃろう」と答え、「二反じゃったら[わが家は例年、二反ほど作付けしている]一人で、バインダーで稲刈りして稲架[村では「はぜ」」と発音する]掛けまでやると、一週間はかかるよ」とその理由を説明した。稲架掛けをすると、さらに二週間ほど後に脱穀しなければいけない。脱穀にはまるまる一日はかかるだろう。それに対し、コンバインを使えば、稲刈りは一日あれば済み、その日のうちに籾を乾燥機に入れて、翌日には乾燥した籾を蔵におさめることができる。

ただしコンバインは手間と時間を節約してくれる代わりに、購入費はかさみ、大雑把にいって、わが家の田圃の条件に適したものは200万円ほどである。作付面積が広い販売農家であれば、それだけの出費もやむを得ないだろうが、自給的農家であれば二の足を踏む。手間暇がかかっても、40万円も出せば買えるバインダーにしようか、と思ってしまう。

コンバインを選択すれば、さらに乾燥機も購入しなければいけない。他方、バインダーの場合は、脱穀機(「ハーベスタ」と呼ばれている)が必要である。乾燥機と脱穀機の値段は聞かなかったが、たしかなことは、前者の機械システムの方が何倍も高くつき、さらに機械が大きいので、収納と設置の場所が広くなければいけない。納屋をひとつ建て増さなければならないかもしれない。

その日は結論を出さずに帰った。悩んだ挙げ句、代役で田植をしてもらった人に稲刈りも頼むと、今年だけという約束で、引き受けてもらった。これで結論は一年後に出せばいいことになった。そこで、今年はバインダーを購入し、モチだけを自分で刈ってみることにした。そして、その結果を機械システムの選択の材料にしようと思った。


久しぶりの稲刈り、稲架掛け
稲刈りの当日は、小雨がぱらつく天候だったが、予定通り稲刈りをすることにした。わが家だけでは大人二人の労力しかないので、妹に助勢を頼んだ。妹家族はわが家の作った米を食べている。

農機センターの若い職員が10時に田圃に来て、バインダーの操作を説明してくれることになっていた。約束の時間から三十分過ぎてもやってこない。そこで、彼の携帯に督促の電話をしすると、しばらくして、農機センターの軽トラックで田圃に到着した。隣町で機械の修理に手間取っていた、と遅れた理由を説明した。

バインダーの操作は複雑ではない。それでも若い職員は丁寧に説明してくれたあと、「何かあったら連絡してください。でも昼からは○○に行きますから、すぐには駆けつけられんかもしれませんが」と言い残し、飛ぶように帰っていた。農繁期の今は、日曜・祝日返上で駆け回っている様子であった。


全部刈り終わると、稲架を組み立てる。まず支柱(「稲架杭」ないしは「稲架足」と言う)を立てて、その上に長い棒を渡す。稲架杭(木製)は、十五年ほど前まで使っていたのを残しておいた。しかし、多くは地面に突き刺す方の端が腐っていたので、使えそうなものを選び、前日、田圃に運んでおいた。さらに長い棒(「ナル」と呼ぶ)は、冬の終わりに孟宗竹を切っておいたので、それを利用した。

稲架を立てるのは三十年ぶりだろうか。しかし、記憶から再構成できないぼと複雑な作業ではない。稲束を掛けるのも稲架立てと同じだけ久しぶりである。家族と妹が時々交代しながら私に稲束を一束ずつ私に渡して、それを稲架に掛けた。ナル一杯に掛けると、さらにその上からもう一段掛ける。

刈り始めてから、稲架掛けが終わるまで正味4時間ほどであったろうか。久しぶりの稲刈りと稲架掛けだったので、新鮮な気分がした。ほとんど作業が終わる頃、農機センターの若い職員が様子を見に来てくれた。無事、稲刈りが終わりそうなのを確認して、彼はすぐに帰って行った。


自然乾燥か強制乾燥か
3畝を刈り終わった印象からすれば、もしバインダーで2反全部の稲刈りをするとすれば、それも週末の二日、ないしは三日で仕上げようとすれば、もう少し人手が必要であろう。その算段をしなければいけないが、作業を終わってから考え、来年からはバインダー+天日干し+脱穀の手順で収穫作業をする気持ちに傾きつつある。

ひとつは、すでに書いたように、機械購入費の問題がある。もうひとつは、コンバインを使う収穫手順では籾の乾燥に問題がある。

バインダーの場合は、籾は茎についたまま時間をかけて乾燥するので、刈り取り時に若干未熟な籾でも後熟が期待できる。また、籾は、次世代の生命の種となる力をしっかりと保持するためには、天日と風で乾燥するのが自然で理想的であろう。そして籾は、命の種であってこそ、我々の命を養ってくれる。

それに対し、コンバインの場合は、刈り取りと同時に脱穀し、籾をすぐに乾燥機に入れて、強制的に乾かす。後熟はむろん期待できない。未熟米は未熟なまま乾燥される。そのため、コンバインでの刈り取りは、バインダーでの時期より遅くする。バインダー場合(手刈りでも同じだが)、茎の下から三分の一から半分が黄変すると刈り取るが、それより遅くして、刈り取り時にできるだけ完熟米が多くなるようにする。(早刈りすると、収量は落ちるが、食味はいい、という人もいる。)

ただ完熟米であっても、短時間に強制的に乾燥されると、生命力を奪われるのではなかろうか。乾燥機で乾かした籾で発芽実験したことはないので確かなことは言えないが、乾燥の不自然なプロセスからそんな具合に推論したくなる。強制乾燥した米は、一年後には極端に不味くなる、という人がいる。そんな話からも、乾燥機から出た籾の生命力に不安な気持ちになる。


来年の稲刈りは?
農機センターの若い職員によると、中古の稲架足(鉄製)を処分したい人がいるという。もし処分するようだったら連絡してもらうようにしたから、昔の木製の稲架杭の使えるものと合わせれば、稲架の支柱はなんとかなるだろう。あと、ナルは今冬に、山から孟宗竹を切り出して来なければならないだろう。(金属製のナルを買うことはできるが、できれば竹にしたい。)ざっと計算すると、背の高い孟宗竹を切るにして、15本ほどは必要になると思う。冬の仕事は増えるが、ナルもなんとかなるだろう。残るは人手。妹に加えて、やはりわが家で作った米を食べている弟家族も動員しようか、と思っている。

 
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