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2004-04-19  空豆にたかるアブラムシ

−[なぜ自然農法の畑には「害虫」が少ないか]−[二十日ダイコンが虫に食われて全滅]−[カラスノエンドウのついでに空豆にたかったアブラムシ]−[アブラムシにだって生きる権利はある]−[アブラムシは崩れたバランスの修正役?]

アブラムシのついた空豆
アブラムシのついた空豆
写真の真ん中辺り、黒ずんでいるところが、アブラムシが蝟集している部分である。ぽつりぽつりと黒い点のようにアブラムシが見える葉もある。

空豆の花が三月後半から咲き始めた。去年の十月末に種蒔きしたものである。空豆はボット育苗したあとで、自然畝に定植した。前年も自然畝だったが、自己採種の種を使ったため発芽がきわめて悪く、ほとんど収穫はなかった。今年は購入種のため、発芽率はよかった(九十パーセントほどか)。豆類は、熟していない自然畝(我が農園で一番古い自然畝は、今年で四年目になる)でもよく育つ。むろん慣行農法のものと比較すると、草の背丈は見劣りする。よく育つとは、主観的な表現であるが、満足できる収穫がある、という意味である。

空豆と豌豆は、秋に蒔き翌年の五月半ばから収穫する豆である。豌豆の方は虫害知らずだが、空豆には春になるとまず間違いなくアブラムシが取り付き、収穫に影響が出る。アブラムシは豆の花が咲くころにやってくる。そこで私は最近、空豆に注意を払っている。

[なぜ自然農法の畑には「害虫」が少ないか]

自然農法のメリットとして、虫害が少ない、とよく言われる。その理由として、自然農法を実践している畑ではいろいろな虫が共棲し、それらの虫の間で食物連鎖が成立しているので、特定の虫が大発生することがないことが挙げられる。たとえば、いま手元にある新聞の切り抜きには自然農法実践家のエッセーがあり、そこに「テントウムシは(…)ソラマメに発生したアブラムシも、一昼夜できれいに食べ尽くします」と書いてある。アブラムシに困らされている私などには福音のように思える記事である。また別の理由として、「不健康な野菜や栄養分が多すぎて困っている野菜に多く害虫は寄ってくる」ので(自然農法の経験を綴った或る本から引用)、自然農法の畑で健康に育っている野菜は害虫にやられにくいことを挙げる人もいる。さらに、虫は必ずしも野菜が好きではなく、まわりに自分の好きな雑草があると、それを食べる、という理由を挙げる自然農法家もいる。

[二十日ダイコンが虫に食われて全滅]

自然農法を始めた最初か次の春、二十日ダイコンを蒔いた。ところが、芽を出してしばらくすると虫に食べられて、ひとつ残らず消滅してしまった。自然農法の畑では虫害が少ない、ということを本で読んでいた私は、知識とは違う現実に驚いた。二十日ダイコンは慣行畝だと、春であろうと秋であろうと、いたって作りやすい作物である。それまでに虫に食われて消滅した経験はなかった。

ただ、その時のことを思い出してみれば、自然農法を始めて日の浅い畝は、草が少なく、二十日ダイコンを蒔いた三月の下旬には、まだ枯れ野原といった状態だった。そこに芽を出したダイコンは飢えていた虫の餌食になってしまったのだ、と思う。自然畝は二、三年もたつといろいろな雑草が生えるようになり、その時期にはもう、春草で覆われている。最初に全滅の経験をした以降、春に二十日ダイコンを自然畝で作ったことがないので確かなことは言えないが、自然畝の現在の状態では、全滅することはないと思われる。時期は違うが、去年は秋に蒔いてみたが、虫害には遇わず、慣行畝と較べても遜色ない出来であった。二十日ダイコンの例は、いくら自然畝といっても、いろいろな草が生え、虫にとって餌が豊富な環境でないと、作物は虫の餌食になってしまう、ということを教えていると思われる。

[カラスノエンドウのついでに空豆にたかったアブラムシ]

さて、空豆に話題を戻すと、四月になって空豆にアブラムシがたかっているのに気づいた。空豆は二種類、作っており、交雑を防ぐため互いに離してある。いずれも一寸空豆と言われるもので、大きな豆(さすがに一寸はないが)が一莢に二つか三つ入る。一種類は今のところ、ほとんどアブラムシはついていない。ところが、もう一種類は、一部にアブラムシがかなりたかっていた。

なぜなんだろう、と考えてみた。いずれの空豆も定植時と寒の頃に発酵鶏糞を施している。しかし、慣行畝で栽培されている他家の空豆の生育状況と比較すれば、施肥量はごく控えめである。だから、上に挙げた虫害の原因のうち、栄養分が多すぎて虫が寄ってくる、というのは当てはまらないと思われる。(ちなみに、空豆は施肥量を多くすると必ずアブラムシにやられる。)

アブラムシのついたカラスノエンド
アブラムシのついたカラスノエンド
黒くなっている茎が、アブラムシがたかった部分である。
アブラムシのついた空豆の周りにはカラスノエンドウが繁茂している。そこに目をやると、カラスノエンドウには空豆以上にアブラムシがついていた。まるで空豆よりカラスノエンドウの方がおいしいと言わんばかりである。

[アブラムシにだって生きる権利はある]

私は虫害に関して、自然農法の畑は栽培者にとってけっしてパラダイスではないと思っている。自然農法でやれば、虫害のために収穫が極端に減ってしまう、ということが少ない、といった程度だと思う。アブラムシだって生きる権利(?)はある。さらに、アブラムシがいてこそ、アブラムシを捕食するテントウムシのような虫が生きていけるのである。アブラムシもいなければいけないのである。ただ、自然農法の畑では、植物は栽培植物だけではないので、アブラムシは分散し、場合によっては、他の植物に好んで集まるので、結果として、作物の虫害は少なくなるのではあるまいか。空豆とカラスノエンドウに集まったアブラムシは、そのことを物語っているように思える。

テントウムシはアブラムシの天敵、ということはよく言われていることなので、アブラムシのたかっている空豆を見たが、テントウムシは今のところ一匹も確認できなかった。自然畝では、テントウムシに限らず、虫はたくさんいる。しかし、こちらの都合で虫たちは発生したり、移動したりはしない。テントウムシがアブラムシを捕食しているのを見たことはあるが、上に引用した新聞記事のように、「ソラマメに発生したアブラムシも、一昼夜できれいに食べ尽くし」たのは見たことがない。論理的に考えれば、そんなことがあっちこっちで起きれば、次の年にはアブラムシがいなくなり、テントウムシは絶滅してしまう。新聞記事は、個別的な事例を一般化して(あるいは一般的事例と受け取られかねないように)書いているだけのことである。

ともあれ、一方の空豆にアブラムシが目立ってついたのは、周りにアブラムシが好むカラスノエンドウがあり、ついでに、空豆も食害された、ということなのだろう、と思う。ただ、カラスノエンドウが周りにある限り、空豆がアブラムシによって致命的な打撃を蒙ることはないだろうと予想している。

[アブラムシは崩れたバランスの修正役?]

自然農法では、食相と虫相が豊かでバランスの採れている環境が大切、ということなのだと思う。何かがはびこると、たとえそれが雑草や虫であっても、バランスを回復するために、その何かが狙われる。

問題の空豆の辺りでは、カラスノエンドウがはびこっている。私自身は、カラスノエンドウはマメ科なので畑を肥沃にしてくれる、と考えて、生えてくると喜んでいるが、雑草でもはびこると、その辺りの環境は崩れてしまうようである。そんなことを言うのは、アブラムシがたかっているのを見たためだけではない。カラスノエンドウが一部、虫害か病害か分からないが、枯れたようになっていて、それまでカラスノエンドウのせいで埋もれてしまっていた苺が、逆に元気な姿をあらわしていたのである。私には珍しい光景であるが、空豆の周囲では、カラスノエンドウの過剰な繁茂を抑制する力が働いているように見える。

カラスノエンドウはアブラムシにやられているのをよく目にする。しかし、今の場合は、繁茂したカラスノエンドウがアブラムシを異常に呼び寄せたのではあるまいか。そのとばっちりを受けて、空豆の一部も餌食になった、ということなのかもしれない。

もう少し観察を続けみようと思う。

 
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