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2001-09-30  最初に何を作るか

自然農法の最初には、何を作るべきなのか、あるいは何が作れるのか。こう自問するのは、作物を選ぶにあたって、畝の肥沃度とか土の柔らかさを無視するわけにはいかないからである。

自然農法を始めた当初は、土は肥えていない。経験的な直観だが、耕起と除草をして、化学肥料を施している土は、ひとつの作物が終わるとやせてしまう。というのも、作物に合わせて施肥量を調整するし、化学肥料は流亡しやすいからである。
また、そのような土は、耕起してしばらくすると固くしまってしまう。有機質に乏しい状態になっているからである。野菜の作り方といった本には、堆肥を入れるように書いてあるが、実際には、本に指定してあるような分量の堆肥を作ごとに入れることは、一般にはまず無理である。また、除草を励行していると、土中に有機物を供給する草の根が残らない。さらにまた、作後の粗大な野菜残さは、病害虫を防止するために畑の外に出す。だから、畑土は、耕起直後はふわふわして柔らかくても、しばらくすると降雨などのため、しまってしまう。

だから、今春、自然農法畝に何を作ろうかと思案した。春には大根やニンジンを蒔くが、土の固さからして、大根とかニンジンなど地中に伸びる根菜類は無理だろう。作るとすれば、カブとかビートとか土中に深く入らないようものに限られる(カブは秋にしか蒔かないが、ビートは春と秋の2回蒔く)。
さらに、もう一つの条件である肥沃度を考えると、作物は限られてくる。肥沃であれば、耕起しなくとも、地上部を食べる野菜は栽培できる。しかし、土が肥えてなくてもできる作物となると、カボチャなどのウリ科とか豆科のものである。そこで、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、インゲン豆(収穫期が梅雨にあたるため、「つゆ豆」とも言う)、大豆(枝豆用)を作ることにした。それに加えて、トウモロコシ(スイートコーン)とレタスも作った。さらに、なし崩し的に自然農法に移行した畝で、キュウリも作った。

カボチャはできた。今までのやり方でも、耕起するにしても肥料はほとんど施さず、豆が、土壌の酸性度矯正のため、苦土石灰を撒く程度だった。豆は酸性土壌は好まないが、草が生えていれば酸性度にあまり神経質になる必要はあるまいと考え、無肥料で作った。ただ、枝豆はできはしたが、この時期に蒔く大豆はかならず、と言っていいほど、カメムシに食害される。だから、食用にはならなかった。
豆を作ったのは、肥沃度のためもあるが、もうひとつは、根粒菌が窒素を固定するので、後の作物のためにとって施肥効果もある、と考えたからである。

エンドウの花
2000年5月始め。エンドウの花が咲き始めた。収穫は5月後半からである。右側の畝は、タマネギ。6月始めの収穫を前に球が少しずつ太り始めている。
豆と言えば、昨秋から今年の初夏にかけて栽培したエンドウがある。前作はナスだった。ナスは5月半ばに定植するから、エンドウを蒔く11月始めには、すでに6カ月ほど不耕起の状態だった。10月から一部の畝を自然農法に移行していたこともあり、この畝も自然農法に変えることにした。初夏にはいつものようにエンドウが食べきれないほどなった。食べきれなかった豆は、皮をむいて生のまま冷凍し使っている。

話をもとに戻すと、ウリ科でも、スイカは失敗、ズッキーニは期待通りにはできなかった。スイカは今回で3作目である。しかし、一度も成功したことがない。休耕田で投げ作りしたとき、まあまあのものができた程度である。今回も、ソフトボール大とピンポン玉大のものができただけである。スイカはカボチャと違い、施肥に気をつけなければいけないのかもしれない。また、ズッキーニは最初こそ大きいのができたが、それからは小さなものしかできなくなった。未熟果を次々にとる作物だから、キュウリのように定期的な追肥を行わないと、収穫は尻すぼみになってしまうのだろう。
トウモロコシは、5月始め、6月終わり、7月終わりの3回蒔いたが、生育が緩慢だったり(初夏作)、実が小さかったり(初夏作、夏作)したものの、まずまずのできだった。7月終わりに蒔いた最後のトウモロコシは、1度軽く追肥した(肥料に関しては、別の記事で述べる)だけであるが、なかなか立派な穂ができている(9月始めの草姿については、ここをクリック)。
レタスは失敗。レタスは、いわゆる「先行逃げきり」型の作物(注)である。だから、肥料は全量元肥として施し、作物は短期間に生育する。ところが、まだ畝は自然農法を始めたばかりで地力がなく、レタスは肥料不足のまま成長・収穫期を過ぎてしまった。途中でレタスの生育型に気づいて追肥したが、時すでに遅しの施肥になった。葉が巻かない(巻くことができない)貧弱な草姿で一生を終えた。

自然農法を意図したわけではないが、前作の後に耕起も施肥もせずに作った作物に、マクワウリトウガンがある。投げ作りであったが、いずれも、その品種特有の大果をつけたり(トウガン)、じゅうぶんな大きさの果実をたくさんつけたり(マクワウリ)して、予想外の収穫だった。この経験からすると、マクワウリもトウガンも自然農法の最初作としてうってつけの作物と言える。ただ、マクワウリの場合、土壌水分の多い畝に向いているかもしれない。

最後に、キュウリ。5月終わりに四葉キュウリ[長くて、イボイボのあるキュウリで、ふつう市場には出回らない]を自然農法畝の最初作として蒔いた。前作はそら豆である。春の経験から、最初作を無肥料で育てるのは、収穫を目的にすれば、一部の作物を除き無理だ、と分かってきたので、このキュウリは追肥することにした。キュウリは、「コンスタント」型の作物で、定期的に追肥しなければ、収穫が少ないし、また、あがりも早い。さらに、ナス同様、土壌水分も重要である。このキュウリは、夏の暑い時期にもかかわらず、追肥と灌水に注意したので、実がたくさんついた。

短い経験からすると、最初に作る作物としては、ウリ科や豆科が無難である、ということになろう。では、それ以外の作物を自然農法の初期に作るにはどうすればいいのか。それについては、追々報告します



野菜作りの指南書ではよく、野菜を生育と施肥からみて大きく3つの型に分けている。「先行逃げきり型」、「コンスタント型」、「尻上がり型」がそれである。
先行逃げきり型」とは、生育期間が短く、肥料は元肥のみ、というタイプの野菜である。たとえば、レタス、ホウレンソウ、カブである。「コンスタント型」は、収穫期が長い作物であり、追肥を定期的に施す。ナス、キュウリ、ピーマン、トマトなどの果菜類がこの型に属する。ズッキーニもたぶんこの型であろう。元肥のやり方は、作物によって違う。トマトは初期生育を旺盛にすると、かならず失敗する。「尻上がり型」は、生育期間は長く、追肥で大きくする、という作物である。ニンジンやダイコンがそれである。私はニンジンは2回、ダイコンは1回、追肥する。スイカもこの型に入れてある。
むろん、この3分類は目安であり、あらゆる作物がいずれかの型にぴったりとおさまるというわけではない。なお、私見では、「投げ作り型」というグループを設けてもいいと思う。肥料を気にかけなくとも、じゅうぶん育つ野菜である。二十日ダイコン、カボチャ、トウガン、マクワウリ、豆などである。[本文に戻る]
 
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