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ハミ焼酎 1999-08-31

焼酎を買いに行く。酒はいつもは農園の近くの酒屋で買う。店の主人いわく、「ハミ焼酎を作るんか」。「うん」。ハミとはマムシのことである。辞書で調べるとマムシの古名、とあるが、この辺りではマムシといわずにハミという。主人は裏から35度の焼酎を1本出してきて、今度は「どこでハミを取ったんな」ときく。ただ冗談に「うん」と答えただけで、本当は、昨日、某百貨店の食品売り場に出店している県北の農園のコーナーで見つけたマタタビを漬けるための焼酎である。そう説明して、「どおやって、ハミを漬けるんや。」ときいてみる。主人は説明し始めた。

まず、ハミを一升瓶に入れて、水を半分くらい加える。毎日、水を換えて、1週間ほどおく。すると、腹の中にあるものを全部排泄してしまう。つぎに、ハミを入れた一升瓶と、きれいに洗った空の一升瓶を、口のところをくっつけて並べる。ハミの入った瓶をトントンと叩いてやると、ハミが空の一升瓶の方に入っていく。それから、漏斗を瓶の口に差して、焼酎を入れる。このとき、注意しなければいけない。口を開けたままにしておくと、ハミがビュンと飛び出してくる。これで噛まれた者は多い。しかし、漏斗をしっかりと差しておくと、ハミは外に出ることはできない。

「ほいじゃ、水、換えるときゃどうすんや。」「口を網でふさいどりゃ、ハミは、よお出ん。水も換えられるし。」

焼酎に漬けると、ハミは怒って口から白い毒液を出す。人によっては、それでハミの役目は終わるので、死んだハミは瓶の外に出してもいいと言う。また、身体から浸み出る成分にも薬効があるので、死んでどぐろを巻いたハミはそのまま入れておく、と言う人もいる。ハミ焼酎は傷や胃潰瘍によく効く。

主人は手ぶり身ぶりを交えながら説明を終えた。

私の感想、「ほいじゃけど、わしゃ、ようハミゃ漬けんの。」主人も、「わしも、よう漬けんで。人から聞いた話をしただけよ。」と笑った。

ちなみに、ハミは地上15cmぐらいのところまでかま首をもたげ、それからシュ−ッと噛みついて来るそうである。父が、両手でハミの様子を真似ながら教えてくれたのを思い出す。だから、草むらに入るときは長靴が必要である。長靴であれば、まず心配ない。また、ハミ取りのうまい人は、箸で首を掴んで瓶に入れるそうである。

主人が最後に付け加えた話。「この前、そこの空瓶を整理しょぉったら、死んで、どぐろを巻いたハミが入っちょったで。」

あなたが今夜のむ酒の酒瓶は、以前ハミ焼酎を作るために使われたものかもしれません・・・

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