田植えは大半を5月28日(土)と29日(日)におえた。しかし、ダブ[湿田]が残った。そのダブを2週間後の6月11日(土)に田植機で植えつけ、13日(月)に植え継ぎして今年の田植えは完了した。(機械植えの場合、機械を方向転換する隅とか、変形田の凸凹部分とか、どうしても植えられない部分が残る。その部分を手植えで補うのが「植え継ぎ」である。)
(クリックで画像の拡大) ダブでスタックしたトラクター。2008年5月。
前輪は地盤が浅いところにあり、後輪は《底無し》の穴にはまった。いわゆる《亀の子状態》になり、後輪はグリップを失った。前輪だけでは、《底無し》からは這い上がれなかった。
このときは、近所のお兄さんに、チェーンブロックでトラクターをつり上げてもらい、後輪にアルミ製のあゆみをかませ、ギヤを超低速に入れて脱出した。
チェーンブロックは、トラクターを囲むように三角錐の形に立てた3本の棒の先端につり下げた。棒はトラクターの前方に見えるもの。畦から田んぼの内部に向かっておかれている。
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(クリックで画像の拡大) 草の生えた《底無し》。
底無し部分は耕作しなかった時期がある。上の画像と見比べると、底無し部分がどこかお分かりいただけるかと思う。
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(クリックで画像の拡大) 無事田植えが終わったダブ。
植え残しているS字部分は、あとから手植えで植え継ぎした。
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(クリックで画像の拡大) ダブ全体を見る。広さは5畝(500㎡)。 |
ダブは扱いづらい。作土の底(硬い地盤)までが深く、トラクターが埋まり込んでしまうような、いわば《底無し》の部分もある。代掻きの仕方が悪いと田植機(私の使っているのは乗用田植機)さえ埋まり込んでしまう。この田んぼでは、じっさい、トラクターがスタックして動けなくなったことがあるし、また、今は休耕(耕作放棄と言えないでもない)している、別のダブでは田植機が立ち往生してしまったことがある。
今年も代掻きを始めるときには、過去の苦い経験ゆえに、不安だった。しかし、今までで一番ことがうまくことが運び、田植えが終わったときには爽快な達成感すら感じた。そこで今年の田植えを中心にして、どのようにダブを田植えしたかを報告する。
ダブとはどんなところか
なぜダブになるのか?田んぼごとの事情があるので、いま話題にしている田んぼに限って、説明する。この田んぼは傾斜地にあり、しかも地下水位が高い。したがって、田んぼの上部分は湿田になりやすい。上から常時、水が流れ込むからである。(1番目の画像の左側が上である。)
さらに、作土の底が深い。代掻きが終わってから底の深さを測ったことがある。作土は軟らかくなっているので、棒を突き刺すと硬い地盤まで入っていく。それから地中に埋まった部分の長さを測れば、底の深さが分かる。一番深いところ(すなわち《底無し》のところ)は50㎝であった。私のもっているトラクターの最低地上高は35㎝なので、30㎝あまりの深さのところまでは、スタックしない。しかし、50㎝もあれば、トラクターのタイヤが泥を踏み抜いてしまうと、間違いなく身動きできなくなる。
水はけ対策の横手
湿田対策として、まず上から流れ込んでくる水をはけやすくしている。荒起こしする際は(荒起こしは乾田状態でする)、ぬかるんでいると、タイヤで土を深く掘ってしまう。作業をしにくいし、また、深い轍は残ってしまうからである。水はけをよくするためには、田んぼの畦に沿って、畦の内側に排水溝を設ける。その排水溝を「横手」と呼ぶ。(1番目の画像で、トラクター後ろ側にS字状の畦様のものが見える。草が生えている部分である。その部分と上の田んぼとの間に溝のようなものが確認できると思う。それが横手である。だから、横手を含めて横手から右側は、田んぼの内部である。)横手はふつう流水路として使う。田んぼによっては、用水路からの取水口がなく、それより上の田んぼから取水した水を横手を通して入れる。流水路としての横手は鍬の幅よりも少し広いくらいで十分である。しかし、湿田対策で設ける横手は幅を広くする。さらに、できるだけ深くする。すると、水の張っていない時期(つまり、秋から春まで)には、タブの部分は乾きやすくなる。もし横手を設けないと、一年中、水が抜けない状態になる。
荒起こしのあとは代掻きである。
荒代掻きの仕方
代掻きは二度する。荒代掻き(「アラジ」と呼ぼう)と植え代掻き(たんに「代掻き」と呼ぼう)である。アラジで初めて水を入れて土をかき回し、そのあとで畦塗りと肥料撒布をして、代掻きをする。そして代掻きの3、4日後に田植えをする。(代掻きと田植えの間に、2日か3日をおいて、代掻きでかきまわした土を落ち着かせる。)
アラジの際には、ダブの部分は畦に沿ってトラクターを走らせるのではなく、バックで畦際まで寄り、そこでローター[回転する鋤]を下ろして、畦と直交する方向に、前進しながら土をかく。代掻きの際にはトラクターを畦に沿って走らせるが、アラジ際にもそうすると、同じ轍を二度走ることになるので、轍が深くなる。それに対し、アラジの轍と代掻きの轍が直交するようにすると、轍が深くなるのを防ぐことができる。
ただ、その際、荒起こしの際に土を十分に砕いていないと、スタックする危険がある。強湿田の部分は何年か耕作しなかった時期がある。その間、その部分には草が生い茂り、土中は根が縦横に張ってしまった(2番目の画像参照)。そこを復田しようと思い立った。荒起こしの際には、土を起こさず、アラジになって初めて起こした。バックしてトラクターを入れ、ローターを下ろして前進しようとしたとたんにローターに強い力がかかり、踏ん張った後輪は土を踏み抜いてしまい、動けなくなった(1番目の画像参照)。そのような事態に陥らないために、荒起こしの際に、土をよく砕くのである。
植え代掻きの仕方
ダブ部分は、アラジはやるが、深くなるのを防ぐため、代掻きはしない、という手もある。じっさい、そうした年もある。しかし、そうすると雑草対策で問題が生じる。私は除草剤を使用する。除草剤は、アラジのときと田植えのあとの2回使用する人がいるが、私は田植えあとの1回だけである。もし代掻きをしないと、除草剤を撒布するときには雑草が大きくなってしまい、除草剤が効かない場合がある。だから、ダブも代掻きまですることにしている。除草剤は田植え後1週間くらい、すなわち、代掻きから10日あまりで撒布するが、そのころは、まだ雑草は除草剤で退治できるくらいの大きさにしかなっていない。
さて、代掻きの際は、外周は畦に沿ってかく。ダブの部分もやはりそうであるが、トラクターはできるだけ直線的に走らせる。少なくとも急な方向転換は避ける。曲がると、タイヤが泥を押す形になり、タイヤに強い力がかかり、土を深くしてしまうからであり、また、泥にはまり込むことがあるからである。
今年は、ここまで順調にことは運んだ。トラクターがスタックしない限り、ほぼ、田植機がスタックすることはない。田植機の方が最低地上高は大きいからである。「ほぼ」であり、「必ず」ではない。じっさい、トラクターがスタックしないで代掻きをおえた田んぼで田植機をスタックさせたことがあった。田植機は車輪の幅が細いので泥を踏み抜きやすい。それが原因だったと思う。今年は、代掻きをしながら、深いところではタイヤの埋まり具合を確認し、その埋まり具合から田植機は余裕で走ることができると判断した。
こんな具合にして、ダブの田植えが終わった。