てつがく村の入口 | てつ人の雑記帳
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村便り:2007-10-27(土) (刈り取り作業あと、闇にのぼる不気味な満月)
投稿日:2007-10-28(日)

 最後に残ったダブ[湿田]の稲刈りをすることにした。ウンカ害から逃れた稲だけを刈って、残りは焼き払ってしまう、というのが作業を始め...

 最後に残ったダブ[湿田]の稲刈りをすることにした。ウンカ害から逃れた稲だけを刈って、残りは焼き払ってしまう、というのが作業を始める前の心づもりであった。

 いつもよりは遅く、11時頃から作業を始めた。まず、田んぼを囲んでいるダミーの電気柵の撤収。アルミ線を巻きとり、ポールを抜きとりながら田んぼの周囲を廻っているうちに、全部刈りとってしまおう、と思いだした。茎は枯れながらも実は充実してる稲を実際に目にすると、頭の中で算段しているとは違った気持ちになる。執念で刈りとってやる、という気持ちがかたまった。

ダブ
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刈り取り前のダブ。
 周囲を除き、ウンカ害で枯れて、窪んでいる。
ウワコウダの刈り取り
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ウワコウダの、蛇行した外辺に沿って、5条分、鎌で刈りとったところ。
今日の作業、終了
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17時、作業終了。
 背景の山には残照があるが、田んぼのあたりはすでに日が落ちている。
 ダブ状態はウワコウダ[斜面にある田んぼで、上側の部分]がとくにひどい。ウワコウダはバインダーが入らない。だから、その部分は鎌で刈りとらざるをえない。田んぼの外周は、4条植えの田植機で往復する。したがって、8条が田んぼの形状に沿って植わっている。そのうち5条分を刈りとることにした。私は田靴[たぐつ - 膝下まで長さのある、薄いゴムでできた田んぼ専用の靴]に履きかえて田んぼにはいった(普通のゴム長では作業しにくいほどの泥濘状態である)。ダブの状態は年によって違うが、今年は落水作業が遅れ、しかも中途半端にしか作業をしていなかったので、5条分刈りとってもまだバインダーが入れる土のかたさに到達しなかった。

 5条というのには理由がある。鎌で刈りとる場合、10株分を一束にする。だから5条分(すなわち5株を)を右から左へ、ザッザッザッザッザッというリズムで刈りとると、2回刈ると一束分になる。しかも、5株で稲をもつ左手が満杯になる。だから、5条なのである。

 鎌での手刈りをしていた時代は落水作業にさほど気をつかわなくてもよかった。水が引ききらないようなところでも、切り株の上に足を載せて刈り進んだ。ところが、バインダーが入り、コンバインが入るようになると、稲刈りまでに土を乾かしておかなければならなくなった。それでもバインダーは軟らかい土に比較的強い。足が10㎝あまり沈むようなところでも刈りとってくれる。しかしコンバインは重量があるので、土が乾いていないと使えない。機械は、大区画に整理し、排水をよくした田んぼで使うことを前提に作られている。コンバインはとくにそうである。わが家のように、昔のままで、圃場整備されていない田では、刈り取り機械はコンバイン程度が相応である。

 暗くなるまでに三分の二ほど刈りとった。それから、明日の稲架掛けのために、ナル[稲架の横木]を3本運んだ。9メートルの孟宗竹は、一日の疲れがたまった肩には重く食い込む。2本目を運んだ頃にはもうとっぷりと暮れていた。西の空には宵の明星が輝いていた。それを背に、もう一本運ぶため屋敷に戻っていた。すると前方の山の端が明るくなり、丸い明かりの一部が見えた。なんだろう?といぶかしがった。満月だとすぐに分かったが、上り切らない月は、周囲の闇とのコントラストで、ぞっとするほど気味悪い大きさであった。
村便り:2007-10-21(日) (今年はこれで稲刈りは終わり?)
投稿日:2007-10-23(火)

 昨日、周辺だけ刈った田んぼの稲刈り。この田んぼには、四分の三ほどはもち米を、残りはうるち米を作っている。昼食までに刈り取りと稲架...

 昨日、周辺だけ刈った田んぼの稲刈り。この田んぼには、四分の三ほどはもち米を、残りはうるち米を作っている。昼食までに刈り取りと稲架立てを行なった。


おうぎ田
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今日、刈り取り稲架掛けした田んぼ。
軽トラに積んだバインダー
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バインダーを軽トラックに積んで帰り支度を完了した。今年バインダーが働くのは、今日が最後になるかもしれない…
 昼食後、稲架掛け。一人だと今日中には終わらない。途中から、ma femme の加勢を得て、夕方5時過ぎに稲架掛けを完了。

 最後に、5畝のダブが残った。ここは最初にウンカにやられたところで、いまは周辺だけを残し、ウンカ害で全面が枯れている。順序からすれば、この田んぼから稲刈りをはじめるべきであったが、ひとつは、被害が大きかったので他の被害の少ない田んぼを優先したため、もうひとつは、タブのうえに水を落とすのが遅れたため、土がバインダーを使えるまでに乾かなかったために、先送りして、結局は最後になった。

 これほどに枯れてしまっていると、やる気がおきない。バインダーでなんとか刈り取り結束できるかもしれない。しかし、それを稲架に掛けるのは時間がかかる。コンバインで刈れば、稲架掛けのプロセスを省略できるので、健康な稲の状態の場合と比べて手間に変わりはないだろう。しかしコンバインはない。そんなことを考えると、いっそ焼き払ってしまおうか、とさえ思う。しかし、5畝だと、大人三人が一年に消費する米は十分に穫れるだろう。それを考えると躊躇する気もおきないではない。決断は一週間後に伸ばして(一週間後には、ダブは全面枯れてしまうかもしれない…)、今日の作業を終えた。
村便り:2007-10-20(土) (稲刈りの途中に、ソバ刈り)
投稿日:2007-10-21(日)

 昨日ソバの生育状況を確かめると、実の多くが黒化してすでに刈り取り適期をすぎているように見えた。一週間前には、そろそろ刈り時、と思...

 昨日ソバの生育状況を確かめると、実の多くが黒化してすでに刈り取り適期をすぎているように見えた。一週間前には、そろそろ刈り時、と思って見たのだから、ソバの生育の速さからすれば、当然の成り行きである。そこで午前中は、急ぎの稲刈り途中ではあるが、まずはソバの刈り取りをすることにした。

黒化したソバの実
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黒化したソバの実(昨日撮影)。
島立て
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島立て。
 ソバは刈りとったあと島立てにする。束ねたソバを、実を上にして、支柱の周りに立てかける。写真の島立てでは、6束のソバでひとつの島を作ってある。それから島全体をぐるりと藁紐で縛る。最後に頭に一束被せる(一番手前の島には -撮影のため- 被せてない)。
 ソバは脱粒しやすいので、稲のように実を下にして干すと収量が少なくなる。島立ては、脱粒を少なくする工夫だと思う。
 島立てのやり方は、ソバの実を送っていただいた青森の方に教えてもらった。
 ソバは根が浅く張るため、鎌を不用意に使うと、茎は切れず土のついた根までついて来る。何本もの茎を掴んで根元から少し上の方を、スパンと勢いよく、しかも鎌の刃を横に引き気味に、切る。それでもついてくる根っこは、軽く鎌を振りおろして落とす。

 今年はソバの生育がいいような気がする。種(自家採種)を塩水で選別したためであろうか、あるいは、肥料の適度な効き具合であろうか(レンゲのあとに、薄く発酵鶏糞を撒いて畝を作った)、あるいはまた、中打ち(中耕)して除草し、元寄せ(土寄せ)をしてやったせいであろうか、ともかく、しっかりした茎になり、実のつき具合もよい。(生育途中に台風でやられなかったこともあろうが。)

 ソバを刈っていると、従姉がやってきた。稲架掛けを手伝ってくれるためである。べつに頼みはしなくても、稲刈り時には、やってくる。手がないことが分かっているからである。彼女は、午後も3時まで手伝ってくれた。

 「今日は、この前の学生さんは来んのん」と彼女。「今週は都合が悪いらしい。まあ、うちの子じゃったら、稲刈りじゃけん来い、と無理やり来させるがの」と笑いながら私。一人で何日もかけて稲刈りをする私に彼女は「自分がたで食べるだけ作りゃええじゃん。こがいによけい作らんでも。田植の準備の時にも何日も夜遅そうまで仕事をせんにゃいけんし」と言った。私は「作らんでも草刈りなんかをせんにゃいけんし、けっこう仕事がある。それだけやっても、草以外は何もできん。一年都合で全面休耕したことがあったが、そのとき、作らんよりは、忙しゅうても作った方がよっぽどええ、と思おた」と答えた。むろん田んぼを管理休耕するのではなく、荒らしておくなら手間はいらないだろうが、そもそも、二足草鞋の生活を始めた動機には、耕作放棄田が増えていくのを見るのが、自分の臓腑がえぐられるように辛かったことがある。私はどうでも作らなくてはいけないのである。

 夕方、日が落ちようとする頃、明日、刈り取りをする田んぼにバインダーを入れて、周辺を刈りとった。明日への勢いをつけるためである。終わると、バインダーには田んぼでの夜越しのため、ブルーシートをかけた。

 日没後、薄暗い中を昨日刈りとった田んぼで稲架掛けを完了した。残照なのか上弦を一日過ぎた月明かりなのか、作業に十分なだけの明かりはあった。
村便り:2007-10-19(金) (稲刈りの夕暮れ、上弦の月が)
投稿日:2007-10-20(土)

 一日の休暇をとった。今日から明日(土)、明後日(日)の三日間でできるだけ稲を刈るつもりである。(クリックで画像の拡大)刈り取り前の田...

 一日の休暇をとった。今日から明日(土)、明後日(日)の三日間でできるだけ稲を刈るつもりである。

刈り取り前
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刈り取り前の田んぼ。
 枯色になっている部分はウンカ被害に遭ったところ。向こうに立っている稲架は他家の田んぼのもの。
刈り取り後
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刈り取り、稲架を立てた田んぼ。
 太陽は、画像右上の山の向こうに沈んだばかりである。
上弦の月
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灰ヶ峰(標高737m)の上空に上弦の月がかかってた。
 今日は、わが家で一番広い田んぼ(7畝=700㎡)を刈ることにした。10時半に刈り取り開始。途中、バインダーの縛り紐がなくなったのに気づかず刈り続け、刈ったまま投げ出された稲束を何束も藁紐で(したがって、手作業で)縛ったため30分ほど余計な時間を使ってしまったが、それも含め2時間ほどで刈り終わった。

 昼食後、稲架掛けに取りかかった。刈り取りは機械の力を借りるので早いが、稲架掛けは手作業で、しかも今日は一人なので、夕暮れまでに全部終えるとは思えなかった。靴をゴム長から地下足袋に履き替えて(つまり、軽装になって)、まず稲架立て。この田んぼの広さでは、稲を2段に重ねて架けるとして、9mの竿が4本必要である。ついで、田んぼのあちこちに転がっている稲束を稲架の周りに集める。それから稲架掛けである。

 案の定、太陽が山の向こうに落ちた時点で、1段目の四分の一も架けることができなかった。

 帰り支度をしながらふと空を見上げると上弦の月がかかっていた。あっと、思った。といっても、月を愛でる気持ちが動いた、というわけではない。もしかすると、暗くなってからも月明かりで稲架掛けできるのではないか、と考えたのである。今日は、日没で作業を終えることにしていたので、これ以上作業はしない。しかし、明日は月はもう少し大きくなっているので、雲さえなければ、暗闇でも何とか作業ができるのではないか。今日の終了時点での進捗状況をもとに、明日からの二日間での作業のやりくりを組立ながら、月を見ていた。むろん、一日地面に張りついたいた眼差しが広い空間に広がった解放感も味わいながら。
村便り:2007-10-14(日) (稲刈り初日)
投稿日:2007-10-18(木)

 稲刈りの第一日目。今日は、学生二人が手伝いに来てくれることになっていた。 9時前から仕事開始。軽トラックで、まずバインダー[刈り取...

 稲刈りの第一日目。今日は、学生二人が手伝いに来てくれることになっていた。

 9時前から仕事開始。軽トラックで、まずバインダー[刈り取り結束機]を田んぼに運び、ついで、昨日やりのこした稲架杭運び。全部で100本あまりの杭を運んだ。これで準備完了。

 わが家は、例年通り、周辺では稲刈りのしんがり。今年はウンカ被害が、皆の記憶にないほどにひどいので、どの家でも早めに刈り取りをした。わが家も去年よりは一週間早い稲刈りである。

稲刈り
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 稲架の周りに集めてある稲束のうち、全体が枯色をしているのが被害株。
 稲架の向こうに見える二人がU嬢とK君。慣れない単調作業を若さでこなしてくれた。
ウンカ
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刈り取るとウンカがまさに雲霞のごとく飛び回った。画像は稲架の横木(ナル)に使う孟宗竹に止まったウンカ。孟宗竹は直径の7割程度が写っている。
 稲刈りをはじめる前、バインダー刈りをする人たちの心配は、ウンカ被害に遭って枯れたようになっている稲をバインダーがうまく結束してくれるか、ということであった。稲の、もろくなった茎は崩れやすく、結束がうまくいかないばかりか、藁くずが機械に詰まり手間取る、という推測話を耳にした。しかし、実際に稲刈りが始まってからは、なんとか結束する、という体験談を聞き、また、結束された稲束を実際に目にしたので、なんとかなる、と私の心配は薄らいできた。

 9時半すぎから刈り取り開始。学生たちの仕事は刈った稲を運び、稲架にかけることなので、彼らが到着するまでに、彼らの仕事量に見合うだけの稲は刈っておこうと作業を急いだ。しかし、約束の10時過ぎても、さらに11時を回っても彼らは姿をあらわさない。やっと到着したのは11時半。二人は軽自動車に相乗りしてやって来たが、今日の運転手のK君が寝坊したらしい。待ち合わせの場所になかなかやってこなかった、とU嬢は遅刻の原因はK君にある、と説明した。仕事の段取りからすれば、約束の時間に来ても仕事はなかったので、ちょうどいい時に到着した、とは言える。

 私は稲架を立てて、彼らと一緒にやってきた従姉に、稲架掛けの指導を任せて、また稲刈りを再開した。

 ウンカ被害に遭ったところは低速で刈り取り、また、倒伏がひどいところは、手で起こして刈り取る。バインダーを使えるにしても、やはりいつもより時間がかかった。

 またウンカ被害の稲とそうでない稲とを別々に稲架に掛けた。味にはおそらく大差はないであろうが、被害株は精米時に小米として処理されるものが多いのではないか、と考えたからである。

 今日、刈り取って掛けたのは、全体の、四分の一あまり。あとは来週末にやる予定。一日経験して分かったことは、バインダー一台の場合は、人間は四人ほどが適正な人数だ、ということ。一人がバインダーで刈り取り、残りの三人が稲を掛けたりする。四人より多くても手あまりになるだけである。
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