てつがく村の入口 | てつ人の雑記帳


村便り

村便り:2013-11-02(土) (稲刈り完了)
投稿日:2013-11-03(日)
(クリックで画像の拡大)日が沈もうとするころ、稲架の並ぶ田んぼ。10月30日。 左端の稲架以外は、南北の方向に並んでいる。南北方向であるの...

稲架
(クリックで画像の拡大)
日が沈もうとするころ、稲架の並ぶ田んぼ。10月30日。
 左端の稲架以外は、南北の方向に並んでいる。南北方向であるのは、稲架の両側に太陽があたる時間を均等にするため。向こうが北。左端の稲架が立っているのは、他家の田んぼ。
 昨日、今日と二日続けて作業をして、やっと稲刈りを完了した。10月中、それも中旬いっぱいで稲を刈りおえたい、と考えていた。しかし、サラリーマン稼業との関係でむずかしいと予測していた、その予測通りになった。稲刈りのあと、稲架で干して脱穀をするが、11月に入ると稲が乾きにくくなる。晴れの日が続くことが少なくなり、乾いては雨にぬれる繰り返しになるからである。去年は一部の脱穀が12月にずれこみ、また、12月はどうしても農作業ができない事情があり、脱穀と乾燥の作業を委託した。乾燥の作業とは、十分に乾いていない籾を、乾燥機に入れ、所定の水分含有量にまでにしてもらったからである。

 例年、最後に稲刈りをするのは、ダブ[湿田]である。この田んぼは、ウワコウダ[傾斜地にある田んぼの、上側の部分]がいつもダブ気ている[湿田状態である]。そこは、バインダー[刈取り・結束機]が使えない。タイヤが埋まり込んでスリップするからである。だから、鎌で手刈りするしかない。

湿田用タイヤ
(クリックで画像の拡大)
湿田用タイヤ。
 バインダーについているのは普通タイヤ。手前の六角形のタイヤが湿田用タイヤ。湿田用のタイヤは、土がかたいところでは、ゴトン、ゴトンといった感じの振動がある。しかし、土の軟らかいところでは、振動がなく、かつ沈まない。普通タイヤより、幅が少し広い。
 今の方向で、画像を見ている眼からして、右側に装着すると、湿田用になる。方向を逆にして、左側に装着すると超湿田用になる。六角形といっても、向かい合う角を結んだ線に対して左右対称ではなく、微妙な違いがある。
 ところが、今年は湿田用のタイヤが転がり込んできた。秋になってのこと。近所を通りかかると、そこのおにいさん(私からしての「おにいさん」であり、客観的には、初老の男性)が、湿田用のタイヤは要らんか、と声をかけてきた。「もろうて来たんじゃが、うちにはあるけん、いらん。いりゃあ、やるで。いらんのんなら、捨てる。」そのときは返事をしなかった。二日後、軽トラでまた通りかかったときに、「どうするんな。もって帰れや。」とまた言われたので、荷台に積んでもって帰った。その人はすでにもっているので、もしかしたら、私のことを考えて、もらって来たのかもしれない。

 そのタイヤをタブのウワコウダで試してみた。タイヤの着脱は簡単である。普通のタイヤでは入れなくなった時点で、タイヤを交換した。その部分は足が埋まり込むくらいの軟らかさである。そして足跡には水がたまる。だから、長靴で作業するのだが、それも田靴[軟らかくて薄いゴムでできた膝下までの長靴]を使う。普通の長靴では泥にとられて脱げてしまうからである。湿田用タイヤは経験がないので、その効果については不安もあったが、ダブ気たところは残らず稲刈りができた。

稲架
(クリックで画像の拡大)
最後の稲刈りとなったダブに立つ稲架。
 向いの小山は紅葉が始まっている。
 画像の左側がウワコウダ。
 この田んぼは耕作放棄田地帯にある。イノシシが荒らしにくるので、電気柵を張りめぐらしてある。この田んぼが昨日と今日で稲刈りをしたところ。今朝、ウワコウダの稲刈りを始める前に隣の田んぼをみると、昨夜イノシシが掘り返したのであろう跡があった。
 電気柵の電池は、近々外すつもりである。電池は1個4000円(税抜)もするので、必要なとき(出穂してから、稲刈りが終わるまで)以外は外しておく。今年は去年使ったものを使った。いまのところ、電圧は十分にあるので、できたら来年も使おうと思う。
 ちなみに、稲架ひとつに稲は320束ほどかかる。稲架の横木(ナルと呼ぶ。私は孟宗竹を使っている)は9m余り。
 このタイヤは付ける方向によって、湿田用と超湿田用に使い分けができる。今日試したのは湿田用の方向だったので、このタイヤを使えば、水が落としてあれば、どんな田んぼでも稲刈りができそうな気がする。今年は、ダブ気たところは最後に稲刈りした田んぼだけだったが、他の田んぼでも年によっては、普通タイヤのバインダーは使えないときがある。だから、湿田用タイヤはこれから重宝するだろうと思う。

 稲を稲架に掛けおわり帰る途中、田んぼで、使い藁にする藁を縛っていたおにいさんを見かけたので、あらためて礼を言った。今朝、作業を始める前にタイヤ圧について、おにいさんに聞きに言ったので、私がダブの稲刈りをすることは知っていた。「湿田用のタイヤを使こうたんじゃが、全部刈れたわい。ええもんをもろうた。ありがとう。」このおにいさんには今まで何度もお世話になっている。本当に足を向けて寝られない人である。

コメント
--------------------
てつ人 ( 2014/09/25 02:08 PM )
 
湿田用のタイヤについての記述、お役に立てて幸いです。

僕も使う前は半信半疑でしたが、効果てきめん、これで向うところ敵、ではなく、やっかいな湿田なし、と嬉しくなりました。

稲架での天日乾燥をしているのは、味の問題とともに、お金の問題があります。コンバインにすると、さらに乾燥機を購入しなければいけないし、乾燥機を入れる小屋を立てなければいけません。でも、歳とともに体力が落ちてきます。ですから、老齢になっても百姓を続けようとすれば、機械力に頼らざるをえなくなるでしょう。まあ、そのときは、百姓をやめる潮時だと思い切るしかないでしょうね。

先代の脱穀機にはカッターはついていませんでした。代わりに、脱穀が終わり、独立の藁カッターで藁を切っていました。それも脱穀機と一緒にもらいました。そちらの方が早く駄目になりました。脱穀機の不調の原因は詳しくは覚えていませんが、農機センターの人に調べてもらい、修理より買い換えを選びました。

イノシシは柵を巡らすしか防ぐ方法はないですね。
--------------------
趣味の小作農家 ( 2014/09/25 01:25 AM )
 
 湿田用タイヤの効果の程を知りたく、検索しこのページにたどり着き、早速中古品を購入して超湿田側で先日に稲刈りを終えました。以前からそのタイヤの存在は知っていましたが、知人にそのタイヤを使用した話を聞いた事も無いので、効果の程を疑問に思っていました。タイヤ購入判断の目安を得られた事に感謝します。

 一輪のバインダーなら刈取った稲株でタイヤが泥に沈まないと思い試してみましたが、稲株から落ちると戻すのに苦労しますし、向きを変える時はタイヤの接地部を中心に人がハンドルを含めた半径で円周上を移動しなくてはならず、利用をあきらめました。

 願わくば、タイヤに代わりクローラのバインダーが商品化されないかと思っていますが、コンバイン全盛ですから叶わぬ夢です。

 近隣から稲架をしていると時代遅れに見られます/そうですが、
火力乾燥はいまいち食味に...と呟きながら、古式農法をもう暫く続けて行こうと思っています。

 先に使っていた脱穀機の調子が悪くなりとありましが、
僭越ながら、ドラムに稲わらカッターが切れなくなると詰まるようになります。

 この度は、湿田用タイヤの体験談、ありがとうございました。

P.S. 奥行2キロメートル程の沢で近隣農家がコンバインで一気に刈取りが終わると稲架をしているのは私の処だけですので、猪の標的となります、粳より糯の方が彼らには好みの様です。
--------------------
てつ人 ( 2013/11/03 08:32 PM )
 
おっしゃる通りだと思います。大きなもので言えば、以前、庭におきっぱなしになっていたので譲ってもらった、と言って脱穀機をもってきてもらいました。そのときは、はっきりと僕のためだったようです。3年くらい使いましたが調子が悪くなり、たまたま近所の人が使わなくなった脱穀機が出たので、それを購入しました。

近所の人ですが、目をかけてもらっています。本当にありがたいです。
--------------------
藤田 典 ( 2013/11/03 05:35 PM )
 
その「おにいさん」は、いつも、てつ人さんの様子を見ていたのでしょう。
そして、本当は、てつ人さんのために、誰かからタイヤを譲ってもらったのですが、
それを話すと、てつ人さんが気兼ねするので、要らないのなら「捨てる」ようなモノだと敢えて説明したのでしょうね。
--------------------

コメントを書く



     
Powered by
Serene Bach 2.19R