村便り:2012-01-28(土)/01-29(日) (寒起こし)
投稿日:2012-02-06(月)
先週末の作業で終わらなかった藁を広げる作業を土曜日に済ませ、日曜日に、田んぼの土をトラクターでひっくり返した。脱穀後、最初の荒起...
先週末の作業で終わらなかった藁を広げる作業を土曜日に済ませ、日曜日に、田んぼの土をトラクターでひっくり返した。脱穀後、最初の荒起こしを寒の内に終える、という目標は今年は達成できた(ただし、5畝ほどの田んぼ一枚は残ったが)。昨シーズンに比べて、1カ月早い荒起こしである。
寒起こし
日曜日は風のある寒い日。トラクターに乗って操作するだけだから、体はあたたまらない。地下足袋に脚絆の足がとくに冷えた。田んぼの土は乾いているので、動きやすい地下足袋にしたが、寒さを考えるとゴム長がよかったかな、と後悔した。
トラクターの回転刃は締まった土を、広げた切り藁の上からひっくり返す。湿った土は稲や草の根が張っているので、粉砕されず、塊となって転がる。切り藁は、土に混ざる、というよりは、土塊に絡みつく。
藁は、切って堆積した状態では、そのまま冬を越しても腐らない。そして、暖かくなってからはじめて鋤きこんだのでは、田植え後、水の張った地中で腐って、ブツブツとメタンガスを放出する。しかし、冬の間に(経験的には、遅くても二月中に)鋤きこんでやれば、代掻き頃には腐って崩れる。鋤きこむと表現したが、土と混和する必要はない。土に直接触れているだけで十分である。
土は、細かく砕く必要はなく、ざっくりと起こすだけでいい。すると、冬の間に、凍みたり、乾燥したりを繰り返して、自然に崩れる。藁も腐った土を春に起こすと、代掻きの準備が整う。
伴は野の生き物たち
土をひっくり返すと必ず鳥がやってくる。今日はカラスとセキレイがやって来た。掘り出された虫や籾を狙うのだろう。今から十数年前、その頃は耕耘機で田起こしをやっていた。まだ四、五歳だった子どもが、私が耕耘するあとからついてきて、起こされた土の中から虫を見つけては声をあげた。当時、私は《子連れ狼》的な生活をしていたので、寒くても、子どもは私にくっついてきた。ふとそんなことを思い出した。しかし、いまは子どもは成長し、私は百姓する《孤狼》(孤老?)となり、伴は野の生き物たちだけとなった。
昨シーズン作ったワラグロがある。その田んぼは昨シーズンは休耕したが、今シーズンは水田に戻す予定なので、耕耘の前に、ワラグロの残骸を焼却した。残骸の上の方は、藁の形が残っていたが、底の方は、堆肥化していた。その部分は田んぼに撒いてしまおうと思って、掘り返すと、中から幼虫が出てきた。形状、大きさから判断するに、どうもカブトムシの幼虫のようである。田んぼは山からかなり離れているが、親カブトムシはここまで飛んできたのだろうか。幼虫がいると分かると、その堆肥の《揺籃》を崩してしまう気にはならなかった。後日、幼虫を堆肥ごと別の場所に移動させてから、耕耘することにして、今日は《揺籃》はそのままにしておいた。
風に鳴る《笛》
荒起こしが終わると、トラクターを田んぼから出す前に、車輪や回転刃にくっついた土をざっと落とす。その間、強い風が田んぼを吹きわたっていた。風が吹くとどこかで、ピュー、といった音がする。笛の音のようでもある。何もない吹きっさらしの場所でいったいどんな笛が鳴っているのだろうか、と音をたどると、トラクターの、穴の空いたパイプだった。いままでもこの音は耳にしていたが、今日はじめてその正体が分かった。風がトラクターのパイプを吹いていたのだ。
(クリックで画像の拡大) 耕耘。 写真を撮るために、トラクターから離れたので、ロータリー(回転刃)は上げてある。 写真の奥は、北。一番奥に見える開いたV字形の山並みの麓は、熊野の町。江戸時代末期からの筆の産地。「なでしこジャパン」に国民栄誉賞の記念品として贈られた化粧筆で、一段と有名になった。 |
(クリックで画像の拡大) トラクターの運転席から見る、ひっくり返した土。 手前に見える車輪は、右前輪。 |
日曜日は風のある寒い日。トラクターに乗って操作するだけだから、体はあたたまらない。地下足袋に脚絆の足がとくに冷えた。田んぼの土は乾いているので、動きやすい地下足袋にしたが、寒さを考えるとゴム長がよかったかな、と後悔した。
トラクターの回転刃は締まった土を、広げた切り藁の上からひっくり返す。湿った土は稲や草の根が張っているので、粉砕されず、塊となって転がる。切り藁は、土に混ざる、というよりは、土塊に絡みつく。
藁は、切って堆積した状態では、そのまま冬を越しても腐らない。そして、暖かくなってからはじめて鋤きこんだのでは、田植え後、水の張った地中で腐って、ブツブツとメタンガスを放出する。しかし、冬の間に(経験的には、遅くても二月中に)鋤きこんでやれば、代掻き頃には腐って崩れる。鋤きこむと表現したが、土と混和する必要はない。土に直接触れているだけで十分である。
土は、細かく砕く必要はなく、ざっくりと起こすだけでいい。すると、冬の間に、凍みたり、乾燥したりを繰り返して、自然に崩れる。藁も腐った土を春に起こすと、代掻きの準備が整う。
(クリックで画像の拡大) 羽の間に空気の層を着て、着ぶくれしたセキレイ。 |
土をひっくり返すと必ず鳥がやってくる。今日はカラスとセキレイがやって来た。掘り出された虫や籾を狙うのだろう。今から十数年前、その頃は耕耘機で田起こしをやっていた。まだ四、五歳だった子どもが、私が耕耘するあとからついてきて、起こされた土の中から虫を見つけては声をあげた。当時、私は《子連れ狼》的な生活をしていたので、寒くても、子どもは私にくっついてきた。ふとそんなことを思い出した。しかし、いまは子どもは成長し、私は百姓する《孤狼》(孤老?)となり、伴は野の生き物たちだけとなった。
(クリックで画像の拡大) カブトムシの幼虫? |
(クリックで画像の拡大) 鉄パイプの笛。 |
荒起こしが終わると、トラクターを田んぼから出す前に、車輪や回転刃にくっついた土をざっと落とす。その間、強い風が田んぼを吹きわたっていた。風が吹くとどこかで、ピュー、といった音がする。笛の音のようでもある。何もない吹きっさらしの場所でいったいどんな笛が鳴っているのだろうか、と音をたどると、トラクターの、穴の空いたパイプだった。いままでもこの音は耳にしていたが、今日はじめてその正体が分かった。風がトラクターのパイプを吹いていたのだ。