てつがく村の入口 | てつ人の雑記帳


村便り

村便り:2012-01-14(土)/01-15(日) (センター試験業務から外れて畑仕事)
投稿日:2012-01-20(金)
センター試験の業務から外れる! ラッキー! この週末は大学入試センター試験。私の所属する部局は受け入れる受験生の数が多く、教職員は...

センター試験の業務から外れる! ラッキー!
 この週末は大学入試センター試験。私の所属する部局は受け入れる受験生の数が多く、教職員は基本的に全員、試験関係の業務につかなくてはいけない(と私は思い込んでいた)。ところが今年は私はその業務から外れた! おそらく大学に就職してからはじめてのことだと思う。受験生が減少してきている、という話は聞いたことがあるが、そのせいで(おかげで?)業務から外れる人が出てきた(私はこれまで、そのことに注意をはらっていなかったが、たしかにそんな話を、教授会であろう、耳にしたことはある)。その幸運な人に今年、私もなった!

 センター試験のある前の週にはいつも、教授会で入試委員から、事前に配布済みの監督要領にしたがって、監督業務の説明が行われる。いままでは、毎年ほぼ同じ内容だったので、退屈して聞いていたが、今年はなにか様子が違う。幸運な人になった私はなかば居眠りしながら聞いていたが、社会科の説明になると委員の不安げな口調と場内のざわつきで目が覚めた。全部聞いていたわけではないので、詳らかには理解できなったが、場内の雰囲気から試験当日、トラブルが発生するかもしれない、と感じた。今回、当事者から外れたのは、本当にラッキーなのかもしれない。

 (後日談:私の部局では、深刻な混乱は生じなかったが、大きく報道されたように、全国的には、センター試験始まって以来の最悪の混乱が発生した。)


マーシュ
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マーシュ。
 アスパラガスの畝を整えるため、枯れたアスパラガスを取り除いたら、マーシュがあちこちに生えていた。マーシュはサラダに入れる野菜。日本では普通は流通していない。初夏に種のつくまでおくと、次の秋から冬に生えてくる。雑草のように繁殖力が強い。しかし、体は華奢なので、邪魔にはならない。
 後ろの雑草のなかに見える赤い小さな粒は、アスパラガスの実。
 そんなわけで、センター試験の二日間は、緊張と興奮の大学構内を離れて、畑で過ごした。やったことは先週と同様の野菜の管理。具体的には一日中、せっせと草取り。追肥、中打ち、株間への藁敷き。先週に続いてかつお菜の畝。さらに、アサツキブロッコリーの畝。


ダイコンサルハムシ
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ダイコンサルハムシ。
 除草すると、よく目につくのがてんとう虫。ダイコンサルハムシもいる。てんとう虫は《益虫》であるが、ダイコンサルハムシは《害虫》。ともに越冬中。てんとう虫は青い草のなか、ダイコンサルハムシは枯れ草のなか、といった棲み分けがあるように思える。
 画像の真ん中の黒光りしている小さな甲虫がダイコンサルハムシ。ここはアサツキの畝。サルハムシの右側、枯れたネギのように見えるのがアサツキ。その右側の、土のついた金属板は、平鍬。
小鳥のように体をふくらませて
 この時期、朝晩は寒いが、昼間は晴れていればあまり寒さは感じない。むろん、寒さに対してそれなりの防備はしている。小鳥は、冬にはふくれている。あれは羽の間に空気を入れ、幾層もの空気で寒さを防いでいるからだそうだ。それと同様に、私も、厚い衣服ではなく、薄い下着やシャツを着がさね、一番上には、薄いが保温性・撥水性・透湿性・防風性のあるジャケットを着て、下に着た衣服を包んでいる。衣類とともに空気の層を何《枚》も着ているというわけである。


百姓をやっても体を傷めるだけ
 昼前、小屋に戻ろうとすると、向うから着ぶくれしたおばさんがやってくるのが見えた。私に用がありそうな様子だった。よく見ると、近所のおばさん(年齢は70半ばはいっていると思う)。近所といっても、小屋がたっている、旧来の屋敷の近所ではなく、小学校に上がる少し前から住んでいた、別の場所にある家(同じ「てつがく村」ではあるが)の近所である。その家にはいまは誰も住んでおらず、行くことは滅多にないので、そのおばさんには平生はたまにしか会わない。

 「Mさん(旧来屋敷のすぐ隣の人)のところに来たら、車が見えたんで、お兄ちゃん(と、そのおばさんは私を呼ぶ)がおるかの、思おて、来てみたんよ」とおばさん。おばさんは夫と二年ほど前に死別し、いまは大きな家で一人暮らしをしている。長男は私より一回り、あるいはそれよりも年下であろうか(その長男を基準にして、私を「お兄ちゃん」と呼ぶ)、同じ市内の市街地に住んでいる。おばさんの家は、わが家の田んぼの隣近所にも田んぼをもっている。長男はその田んぼで稲を作っている。といっても、田植えまでの作業と収穫作業が主たる仕事であり、田植えから稲刈りまでの水の世話はおばさんが受けもっている。市街地に住むサラリーマンであれば、毎日田んぼの水を見にわざわざやってくるわけにはいかない。だから、長男とおばさんが、ともに不可欠な人手として、稲を作っている、と言えよう。

 雑談から始まり、その長男とおばさんの家の百姓の行方とについての話になった。「H(長男の名前)は若いけど、腰が悪いんよ」とおばさん。H君は見た目には線が細い。おばさんは華奢だから(おばさんの夫は大柄な人だった)、母親似かもしれない。それにしても腰が悪いとは知らなかった。おばさんの話からすると、ぎっくり腰になったことがあるようである。「無理ができんのじゃが、井手堰きにいくと他の人は、若いけん期待するじゃろう。本人も頑張る。ほいじゃが、家に帰るとぐったりしてしまうほど疲れてしまうんよ。稲刈りのときは、重い籾袋(籾袋は20kgあまりである)を運ばにゃいけんけん、つらそうなんよ。この前は、来年からは米を作るのをやめようか、と言ようった。」

 この村の農業の経営規模は小さい。人並みに物質的な豊かな生活をしようとすれば、兼業農家をやらなければ、しかも農業以外の収入が主でなければ、生活はなりたたない。農業からの収入はほとんどない。いや、農機具の購入費などを考えれば、赤字経営とも言えよう。百姓をすると損をする。それがこの村では大部分の農家の実情だと思う。「百姓をしても何の甲斐もなあんじゃけん。からだを痛めるだけじゃ。Hを見ようると、かわいい[かわいそう]よの。」

 そんな村だから、今の経営者が年老いてリタイアすると、それからは、たとえ次の若い世代が同居していても、その家の田んぼと畑が荒れてしまう。おばさんは、自分が死んだあと、子どもが百姓を続けることは期待していないようである。じっさい、二人三脚でやっている稲作は一人が欠けると続けられなくなる。私としても、よそ事ではない。私が百姓をできなくなったとき、おそらく百姓としてのわが家は終わると思う。子どもに、百姓をやれ、とはとても言えない。村での百姓の実情を身にしみて分かっているからである。生身を傷め、サラリーマンとしての《身》を削るだけの《甲斐》だからである。

 ひとしきり立ち話をあとで、おばさんは立ち去った。おばさんは屋敷を出る前に、こちらを向いて身をかがめた。おばさんは屋敷から井手をまたいで狭い道に出たときまた、こちらを向いて身をかがめた。田んぼが隣の、したがって、同じ井手から取水している、私に、息子と仲良くしてくれ、と言うようにも思えたし、またしばらく会えないので名残を惜しんでいるようにも思えた。私は、おばさんがわが家の庭木(たんなる雑木も生えているが)の陰に隠れてしまうまで見送った。

芽キャベツ
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芽キャベツ。
 定植してから一度も追肥をしてやらなかったので、生育が悪い。芽が小さいし、葉っぱも寒さに負けて色が悪い。追肥したが、ここのところ雨が降らず乾燥しているので、効かない。雨待ち。雨が降って肥料を吸収しても、どこまでもちなおすだろうか。
冬の準備が肝要
 百姓の《甲斐》を考え、行く末を思うと明るい気持ちにはなれないが、心機一転、昼飯のあとは、また農作業に戻った。越年してから収穫する野菜の管理は、アスパラガスの畝を残して、除草、中打ち、追肥、藁敷きを終えた。雪遊びにも行きたいが、春からの農作業を順調に進めるには(もっとも、今まで一度も「順調に進ん」だことはないが)、冬の準備が肝要。つぎは空いている畝の耕耘と、田んぼの耕耘とを、できれば一月中にやっておきたい。
コメント
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てつ人 ( 2012/01/26 09:16 AM )
 
 まさに寒の内ですね。全国的に荒れ模様のようですが、こちらでも昨日、今日は一段と寒さがまし、うっすらと積もる程度に雪が降りました。

 寒さ自体はさほど問題はないのですが、積雪になると作業ができなくなるので、スケジュールが狂ってしまいます。もっとも少し長い目でみれば、冬の間に積雪が多いと、稲を作る夏の間は水の心配が減じられる可能性が高くなるので、ありがたいのですが。

 ともあれ、体調不良になるとサラリーマン稼業にも農作業にも差し支えますで、体調はしっかり管理します。

 いたわりの書き込み、どうもありがとうございました。
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藤田 典 ( 2012/01/24 09:12 PM )
 
寒い中、農作業ご苦労様です。
比較的暖かい正月でしたが、この冬最大級の寒波が来そうです。
インフルエンザも流行り始めましたから、
作業に精を出し過ぎて、本業を「休む」ような事にならぬよう、ご用心下さい。
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